「ほんとは意味を知らないけど、わざわざ人に聞くのもなんか寒いな」というファッション用語をわかりやすく楽しく解説する『いまさら聞けないファッション用語辞典』。今週解説する言葉は ”キッチュ”。
【第20回】キッチュ(KITSCH)
Illustration:HONGAMA
Instagram:@hongama56
[名詞、形容詞]
まがいもの、下品な、俗悪、低俗
元々はドイツ語で、英語でも同じ綴りで浸透しています。本来は良い意味ではないのですが、ファッションにおいて、”あえて”悪趣味な安物を積極的に使用して楽しむ美意識を表しています。1970年代頃から、ポップ・カルチャーなどの影響もありロンドンなどでストリートファッションとして登場してきたこの価値観は、現在でも、例えば上品な服にあえてチープなケミカルジーンズをコーディネートしたり、あるいは、[Moschino]がマクドナルドのモチーフを取り入れたり、メゾンのパロディをしたりと、キッチュのマインドでファッションを楽しむという行為は脈々と受け継がれています。こういった背景もあり、今ではキッチュという言葉を”遊び感覚のあるおもしろいお洒落”といった意味で使う人が多いようです。
それでは例文へ。
○
彼氏「おお! なにそのケバケバしいレオパードのパンツ! 」
彼女「え、変かな?(泣)」
彼氏「あー! いやいやいや、良い! 良いわ〜。キッチュな外しとして効いているわ〜。」
解説:出ました。優しさのキッチュ。あえて悪趣味なものを取り入れるというのは諸刃の剣なので、失敗してしまっているのを指摘できない状況では優しさキッチュでお茶を濁す大人の対応を心がけましょう。
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A「お前いくら金ないからって、ジャケットのインナーにバイト先のコンビニの制服のポロシャツ合わせるのやめろよ! どんな感性してんだよ! 」
B「まぁそこはあえてな。キッチュだべ?」
解説:センスのある人があえてやるから良いわけで、もともと悪趣味な人や経済力のない人などがけばけばしいものや安っぽいものなどを使用した場合、それをキッチュとは言えませんのでご注意を。
さぁこれでみなさんキッチュは覚えられましたね。今まであまりこの言葉を使って来なかった方は、事前に自宅でキッチュと繰り返し発音することで、「なんか赤ちゃん言葉みたいで照れんなこれ。」という羞恥心を薄めていきましょう。