「ほんとは意味を知らないけど、わざわざ人に聞くのもなんか寒いな」というファッション用語をわかりやすく楽しく解説する『いまさら聞けないファッション用語辞典』。今週解説する言葉は ”カットソー”。
【第26回】カットソー(cut and sewn)
Illustration:HONGAMA
Instagram:@hongama56
[名詞]
カットソー
意味は分かっていても、カットソーを厳密に定義できる人は、なかなかいないのではないでしょうか? なぜなら、かなり曖昧な使われ方をしている言葉だからです。
カットソーは、綿生地のトップス全般を指すことが多いですよね? もともと、カットソーの語源は、cut and sewn。生地を裁断(Cut)して縫い合わせた(Saw)ものを指します。編んだニット生地を裁断し、縫っていればそれはカットソーです。
「じゃあ、Tシャツとカットソーで何が違の?」という方も多いでしょう。結論から言うと、Tシャツとカットソーは同じ仲間です。カットソーというカテゴリーの中に、Tシャツがあります。Tシャツも生地が裁断されて、縫製がなされているのでカットソー。同様に、トレーナーなんかもカットソーです。
「そんなこと言ったら、逆にカットソーじゃない服ってなんだ?」ということになりますよね。例えば、編むだけで形作られたセーターやカーディガン。これはカットソーではありません。しかし、裁断された後に縫製されればセーターでもカットソーと言うことができます。
このカットソーという言葉、お店やブランドにより線引きがあいまいです。最終的に、商品名を決定するのはブランドなので、各々のさじ加減次第ということになってしまいます。消費者にわかりやすくする為に、大まかなくくりにしている側面もあるのでしょう。シンプルなTはTシャツ、生地がTシャツより厚めならトレーナー、デザインされていたらカットソー、”切って縫う工程”があっても、ウール生地でモコモコしていたら商品名は”ニット”であったり……。
いよいよ、よくわからなくなって来た頃だと思いますので、まとめに入ります。
今回、ネットなどで調べて色々な意見をまとめた結果、こういう結論に辿り着きました。カットソーかどうか悩んだら、”コットン素材のものは全部カットソー、ウール素材のものは全部ニット。”厳密には違いますが、大きく誤解が発生することもなさそうなので、日常会話レベルでは、こんな認識でもいいのではないでしょうか?
それでは例文へ。
○
彼女「このジャケットだったら、インナーには何を合わせたらいいかな?」
彼氏「シャツじゃなくて、あえてカットソーにしたらいいんじゃない?」
解説:技ありです。一見アドバイスしてるようですが、”正直どうでもいいし、なんて答えればいいか困る”という本心をカットソーという言葉の曖昧さを利用することで、巧みに隠しています。当たり障りのないベストアンサーでしょう。
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男A「このカットソー良くない? おばあちゃんが全部手編みだけで作ってくれたんだ! 」
男B「すごいね!でも、それは明らかにセーターだね。」
解説:裁断していない上に、モコモコのウールの場合は、さすがにカットソーだと間違いになってしまいます。
かなり広い意味で使われているカットソーですが。語源を知っていると見方も変わってきますよね。これからは、買い物中に「あー、これは正しくはカットソーだな。」と心の中で思いながら、一つ大人になりましょう。