先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

by Mastered編集部

世はインターネット時代。次から次へと新しい言葉が生まれ、そして消えていく、なんとも忙しい時代ですが、そんな時代の荒波を華麗に乗りこなすべく、"先月海外で流行った言葉(=バズワード)"を海外の様々なカルチャーに深く精通するAkeem the Dream氏に解説してもらうのが、この連載『先月のバズワード』。

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」
世はインターネット時代。次から次へと新しい言葉が生まれ、そして消えていく、なんとも忙しい時代ですが、そんな時代の荒波を華麗に乗りこなすべく、”先月海外で流行った言葉(=バズワード)“を海外の様々なカルチャーに深く精通するAkeem the Dream氏に解説してもらうのが、この連載『先月のバズワード』。

第7回(2016年8月のバズワード)でお勉強するのは「#Blacklivesmatter」であります。

■先月のバズワード 第7回「#Blacklivesmatter」

今、アメリカで大きな社会現象となっている、Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)運動。 “Black Lives Matter”とは4年前、当時17歳の黒人少年トレイヴォン・マーティンが自称自警団の男に射殺された事件を発端に生まれた運動であり、以後、黒人が警官に殺害されるたびに全米各地で大規模なデモへと発展している。

Black Lives Matterは直訳すると「黒人の命 “は” 大切」となるが、これでは本当の意味と背景がつかめない。この言葉が本当に表しているのは、「これまで人種差別と白人特権により白人の生命のみが尊重され、黒人はいとも容易く殺されてきたが、黒人の生命 “も”また、同等に大切なものだ」という主張だ。

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

このBLM運動が、先月、1人のNFL アメリカン・フットボール選手の静かな行動によって、少し違ったアングルから新たな注目を浴びる事となった。その行動とは……試合開始前、アメリカの国歌が斉唱される際、合衆国の国旗とその国家が備える自由と正義に対する忠誠心を表す「起立」または「右手を左胸に当てる」というジェスチャーをせず、ベンチに座り続けるというものだった(ちなみに2009年までNFLの試合で国歌を斉唱する風習は無かったが、近年国防総省がNFLチームへ献金を始めた事によって始まった。)

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「黒人や有色人種へ差別と虐待を続ける国の国旗に敬意は払えない」とこの行動の理由を述べ、アメリカに住むマイノリティー達が晒されている現状を社会に訴える為にフットボール・スタジアムを使って抗議行動を起こした男が、サンフランシスコ49ersのクォーターバック、コリン・キャパニックだ。

今年の年俸は1100万ドル(約12億円)、かつては49ersを2012年のスーパーボウルへと導いたスター選手であったが、現在はチームの新体制の下、スターティングメンバーから外されベンチを温め続けている。 実の母親によって養子に出されたコリンは裕福な白人のキャパニック家の両親によって育てられており、政治にコンシャスな “ブラックパワータイプ” と言うよりは安定した環境の元、アスリートとしての才能を開花させたエリートタイプだ。

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

そんな彼がこの抗議運動を始めた後、そのクリーンなキャラクターを一変させ自分の“黒さ”をこれ見よがしに見せつけるアフロヘアやコーンローヘアスタイルで試合に登場するのを見た時は、「この人一体、何がしたいのだろうか?」と一抹の不安を感じた……が、抗議行動によって売り上げがナンバー1に急上昇した自分のレプリカ・ジャージの売り上げの100万ドル(約1億円)をチャリティーに寄付すると宣言し、その本気っぷりをアピールした。

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

当然ながら、彼の行動は賞賛と批判を呼んでいる。

「チームや競技、国家、さらには国家を守る為に戦ってきた米兵を侮辱する行為だ」とお門違いなヒステリーを起こす連中と、文脈を捻じ曲げて自分の主義や政策を押し通そうとする日和見主義的な評論家スジが騒ぎ立てる反面、チームは「宗教や表現の自由をうたう米国の精神に基づき、個人が国歌演奏に参加するかしないかを選択する権利を認める」とキャパニックの意思を尊重。

退役軍人たちからは「自由を守るために戦っているんだ。国歌のためじゃない」、「彼が抗議する権利のために兵役に就いたんだ。警官の暴力のためじゃない」といったキャパニックを支持する声が次々と上がった。

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

先月のバズワード 「#Blacklivesmatter」

アメリカのスポーツの世界は、選手達が積極的に政治的主張をする歴史を持っている。ベトナム戦争の徴兵を拒否し、平和を訴えたモハメド・アリ。ベルリンオリンピックでヒトラーのプロパガンダに立ち向かった、ジェシー・オーエンス。近年では、メキシコオリンピックでブラックパワー・サリュートしたトミー・スミスとジョン・カーロスなど等。

この系譜に名を連ね、先人達と同等の力と知性を合わせ持っているかどうかは、これから証明する余地を残すキャパニックだが、ここまでの大きな論争をまき起こし、BLMという社会問題と抗議運動を全米に改めて注目させた功績は素晴らしい。

頑張れキャパニック! 

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Akeem the Dream

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