現代の「デートカー」を探る。『酒と泪と男と車』 第6回 Nicolas Yuthanan Chalmeau vs 松坂生麻

by Seiya Kato

今では到底考えられない話だが、僕らが産まれたバブル期には自分が乗っている「クルマ」で女の子にモテようという邪まな考えがあったらしい。フェラーリ、ベンツ、ポルシェといった高級外車が飛ぶように売れ、若者達は「デートカー」なる”デートに最適な車”を無理してローンで購入する。そんな時代が、かつて、たしかにあったのだ。
けれども時は流れ、”クルマ”はいつしか男たちにとって、”モテるための道具”から”頼れる相棒”へと変化した。車はその人のライフスタイルを映す鏡であり、しばしば誰にも邪魔されない時間を提供してくれる自室そのものにもなり得る。
本連載『酒と泪と男と車』では、さまざまな分野で活躍するクリエイターに自慢の愛車に紹介してもらい、その魅力を存分に語ってもらった後、Mastered編集部が招いた3名の女性審査員が「どちらのクルマの助手席に乗りたいか」を完全主観でジャッジ。果たして僕らの”頼れる相棒”は、現代のデートカーになれるのか!?
第6回は、Nicolas Yuthanan Chalmeauと松坂生麻という2人のディレクターに登場して頂きます。

Photo:Kazuki Miyamae

Sillage(シアージ) ディレクター Nicolas Yuthanan Chalmeauの愛車 『Land Rover Defender 110 TDCI 2008年』

車輪4つとハンドル1つというシンプルな構造ながらダイナミックで、クルマそのものを楽しみたい

— クルマに興味を持ち始めたのはいつ頃からですか。

自分が乗るとしたら、ファッションと同じように強い個性と豊かな歴史を持つクルマが良いなとは常々思ってて。このクルマは、1948年にLand Roverシリーズの初代として登場以来、その評価を高めてきた伝説的な四輪駆動自動車なんです。東京は狭い道とか曲がりくねった道が多いからこの車格は走りにくいかなって思ったりもしたけど、大柄な僕にはこれくらいの車体がベストだったっていうのもあって。母国のフランスでは制限速度の取り締まりが厳しいから安全運転が普通なので、ゆっくり走ることは気になりませんね(笑)。

— このクルマを購入した経緯を教えてください。

どうしてもこのクルマに乗りたくてイギリスから船で輸送してもらったんですけど、途中香港に立ち寄って、横浜に到着するまでに半年くらいかかったんです。しかも納車してから1ヶ月もしないうちに高速道路でタイヤが1つバーストして、タイヤは粉々だし煙は出てるし、本当に焦りました(笑)。古い個体はこういうことがあるから、メンテナンスが本当に重要なんだなって思いましたね。

— このクルマのお気に入りのポイントを教えてください。

この車種に限りませんが、こういったタイプのクルマって街乗り向けでもファミリー向けでもないから、購入するには強い意志とモチベーションが必要だなっていうのは大前提でありました。だからこそ乗ってみかったっていうのもありますね。車輪4つとハンドル1つというシンプルな構造ながらダイナミックで、クルマそのものを楽しみたいという人にはもってこいかなって。あと、現地にあった時はマニュアルだったのんですけど、オートマチックトランスミッションにカスタムしているのも気に入っています。

あと、車内とトランクが広々としているのも良いですね。祖父母を含めた家族全員が乗れちゃううえに、トランクにも荷物がたくさん詰めるんです。オンラインストアにはカスタマイズするのに必要なパーツが沢山あるから楽しみは広がります。

— クルマでの休日の過ごし方を教えてください。

Defenderは山とかビーチサイドとかのドライブにもぴったりだし、キャンプなんかにも最高のクルマです。まだオフロードは試せていないんですけど、早くその走破性を体感しに出掛けたいですね。ちなみに、最近の僕のお気に入りスポットは静岡県の富士宮です。

Nicolas Yuthanan Chalmeau(ニコラ・ユタナン・シャルモ)

Sillageのディレクターを務める傍ら、フォトグラファーなど多岐に渡り活動を行う。

Name.(ネーム) / :CASE(ケース) / urself(ユアセルフ) ディレクター 松坂生麻の愛車 『Volks Wagen T-ROC 2020年』

かっこいいとは言い難い、ちょっと愛くるしいのがVolks Wagenの1番の魅力かなって

— クルマに興味を持ち始めたのはいつ頃からですか。

幼少期から家族で遠出をするってなると、移動手段が常にクルマだったんですよ。特に高速道路に乗ってどこかへ出掛けるのが好きで、行き帰りの移動中もずっとワクワクしていたのを覚えています。なので気になる車種があったとか、憧れのクルマがあったというより、クルマに乗ること自体がとても好きでしたね。

— このクルマを購入した経緯を教えてください。

もともとはGOLFに乗っていたんですけど、廃車が近いということで乗り換えを考えてて。Volks Wagenが好きなのでTiguanにしようと試乗しに行ったのですが、車体がかなり大きかったのでひとまわり小さいT-ROCにしました。やはり、憧れやこだわりよりも使い勝手が最優先です。

— このクルマのお気に入りのポイントを教えてください。

この”なんとも言えない”デザインが気に入りました。かっこいいとは言い難い、ちょっと愛くるしいのがVolks Wagenの1番の魅力かなって。そういった意味では、T-ROCはVolks Wagenらしさが溢れたデザインですよね。

ちなみにVolks Wagenはドイツ語で”大衆車”という意味で、とにかく乗りやすくて扱いやすいのも気に入ってます。そういった日常に寄り添うブランディングがとても好きなんですよね。

— クルマでの休日の過ごし方を教えてください。

自粛が終わり世の中が落ち着いたら、日本海側の方へ行って海鮮丼を堪能するという贅沢なドライブへ行きたいです。運転するのが好きなので、早くクルマで遠出がしたいですね。

松坂生麻

Name.のPRを経て、現在は同ブランドのディレクターを務めつつ、urselfのプロジェクトを手がける。また、2021年春夏シーズンには自身のブランド、:CASEをローンチ。

Judgement Time

某ファッションブランドのMDとして勤務するYさん。

「うーん。どちらもかっこいいから迷うけど、松坂さんの『T-ROC』ですかね。愛嬌のある表情が可愛いなって思いました。あと、どんな服装をしていても合いそうだったので」

自身でマーケティン会社を運営するMさん。

「私はニコラスさんの『Defender』が良いです。デートでこの車が来たらドキっとする(笑)! 車体が大きいから友達も一緒にキャンプとかいろんな場所に行ってみたいですね」

様々なブランドのECサイトを運営するAさん。

「もともとVolks Wagenが好きなので、松坂さんの『T-ROC』で。四角いクルマもかっこいいけど、自分が助手席に乗っていることを想像したらこちらの方がしっくりくるかなって思いました」

総括

初登場の現行車が見事勝利! 無骨なデザインも捨てがたいですが、女性としては”親しみやすさ”も重要なポイントなんだとか。