現代の東京において、まことしやかに囁かれる都市伝説のようなゲーム『名刺じゃんけん』。お互いが持ち合わせている名刺の中から、有名な会社に努めている人物、またはその人自身が有名な人物の名刺を出し合い、その有名度によって勝敗を決するという、世にも悍ましい遊戯であります。
そんな『名刺じゃんけん』を良い子のEYESCREAM.JP読者の方々に向け、ユニークかつ、お茶目、そしてスタイリッシュにアレンジしたのが、この『Tシャツじゃんけん』。
EYESCREAMブログや連載『先月のバズワード』でもおなじみのAkeem the Dream氏と、コンセプトブランド[TILT]のデザイナーであり、DJとしても広く知られるEZ氏をホスト役に迎えてお届けする『Tシャツじゃんけん』ですが、ルールはいたって簡単。
毎回テーマを1つ設定し、様々なゲストクリエイターがテーマに沿った「とっておきの1枚」を持参。Akeem氏とEZ氏が持参した「とっておきの1枚」と合わせて、それぞれのTシャツを皆で品評していきます。
第2回目となる今回のゲストは[HECTIC(ヘクティク)]のディレクターとして、T19の一員として、東京のスケートシーンを牽引し、現在は[Hombre Niño]や『PLUS L by XLARGE®』のデザインを手掛けるYOPPIこと江川芳文氏。テーマはもちろん、”スケートTシャツ”です。
Photo:You Ishii
Text&Edit:Keita Miki
■『Tシャツじゃんけん』第2回 スケートTシャツ編
Akeem:では、第2回目となる『Tシャツじゃんけん』、始めていきましょう。まずは、記念すべき初めてのゲスト、YOPPIさんのTシャツから検証していきましょうかね。
EZ:これ、毎回お宝鑑定団みたいに白い手袋とかした方が、画的に良いんじゃない?
Akeem:(笑)そうですね! 次回からそうしましょう! これは……Real(Real Skateboards)のTシャツですか?
EZ:[BELTON]ボディの後染めシリーズだね。
YOPPI:そうそう。後染めだから普通よりも縮みが多くて、2XLを買ったんだよね。
Akeem:なるほど、この独特の色合いは後染めの色合いな訳ですね。90年代の雰囲気がヒシヒシと伝わってきますね。グランジっぽくもあるのかな。ちょっと違うか。
YOPPI:あー、そんなイメージあるかも。
EZ:このTシャツ、発注する時、アソートでさ。色の注文が出来なかったんだよね。
YOPPI:エンジが来たり、ネイビーが来たりね。ムラ感もバラバラで(笑)。
EZ:しかも製品にしてから染めてるから、着丈だけ縮んで、身幅は異常にデカい(笑)。
Akeem:でも、それもまた良いですね!
YOPPI:この時ってまだPhotoshopが無い時期?
EZ:正確に言うと、Photoshopが世の中に出回り始めた時期で、Tシャツのこの部分にしかプリントが出来なかった時代。
Akeem:プリントサイズの制限が伺えますもんね。Tシャツの全面積に対するプリントのサイズが、異常に小さい(笑)。
EZ:Photoshop2.0くらいの時代かな。
YOPPI:このTシャツが発売された当時、Salman AgahとTommy GuerreroとJim Thiebaudがスケートツアーで日本に来ていて、僕も一緒に滑りました。
Akeem:このシリーズで、スケボーの板もありましたね。
EZ:レールなしで板が滑るSlick Bottomの最後の方だよね。
YOPPI:誰のアイディアかは分からないんだけど、とにかくみんな、このプリントに使われている写真の撮影が嫌だって話しててさ。
Akeem:でしょうね(笑)。この時、YOPPIさんは既にRealにスポンサードされてたんでしたっけ?
YOPPI:うん、たしかホイールだけ受けてたかな。だから、90年代にRealのメンバーが日本に来た時は、基本的に一緒にツアーを回ってたんだよね。
Akeem:懐かしいですね。TGは、ギラギラのスーツにマントみたいなの着てましたもんね。
EZ:そう。プレスリーみたいな白いスーツ。
Akeem:他のデザインのTシャツも全部持ってたんですか?
YOPPI:全部持ってると思うよ。今も持ってるはず。1992年のモノだよね、たしか。
Akeem:当時はこれ凄く斬新に見えて、パンク精神を感じましたね。World Industriesとかが走りだと思いますけど、1980年代には無い、攻めたデザインがこの時期から出てきてましたよね。
YOPPI:たしかに。それまではブラックジョークを売りにするというか、実際に板とかTシャツにするのは、メジャーなやり方では無かったかも。
EZ:パロディーはたくさんあったけどね。
YOPPI:今で言う、Girl(Girl Skateboards)とか、Chocolate(Chocolate Skateboards)の遊びの感覚と、この辺は近いのかもね。
Akeem:ちゃんとプリントが残ってるのが良いですね。かなり厚めにインクが乗ってます(笑)。
EZ:思いっきりラバープリントだしね。
Akeem:これは今年も全然着られそうじゃないですか。ずばり、今年着たい度は?
YOPPI:正直、どこに向けて来て良いかは分からないけど、ちょっと着たいかも。
EZ:子供受け良さそう。と言うか、全然着るでしょ(笑)!
Akeem:では、続いてEZさんのTシャツに。[Life’s A Beach]のかなり初期のTシャツですね。
YOPPI:MADE IN USA! サイズはXLだね。
Akeem:いやはや、これは中々強いですよ、レア度はかなり高いです。普通は”Life’s A Beach”の下に入る文字が”SURFGEAR”ですもんね?
EZ:そうそう、普通は”SURFGEAR”で、その後は、”Life’s A Beach”の文字だけになる。
Akeem:でも、今思うと[Life’s A Beach]のアイテムって派手でしたね。ド派手なドクロの総柄パンツがあったりとか。
YOPPI:昔、[Life’s a Beach]にスポンサードされてたからファイアーパターンのパンツとか履いてたよ(笑)。
Akeem:好きな人は好きだけど、総じてオシャレ偏差値の高いブランドだったように記憶しています。
YOPPI:まぁ、[Life’s a Beach]が好き嫌いって話はひとまず置いておいて、自分が言えるのは、ゴンズ(Mark Gonzales)が一番格好良かったのは、やっぱりこの時代だなってことかな。この写真は本当に最高。
EZ:当時、この文字の部分をトレースして、デッキテープに描いたりしてたな~。
YOPPI:これ、今でも着てるの?
EZ:いや、さすがに今は着てない。
YOPPI:Girlとか、BRONZE 56Kも、最近[Life’s A Beach]のパロディものを出してたよね。
EZ:ちょっと昔のサーファーっぽいけどね。今年着てみようかな。けど、ワインこぼしたりしたら嫌だな……。
YOPPI:アメリカで買ったら400ドルとか、500ドルくらいするよ、これ。
EZ:やっぱりダメだ。赤ワインとかボトボト垂らしちゃいそう(笑)。
Akeem:それでは最後に私のTシャツを。スケートTシャツの王道中の王道、Powell PeraltaのTシャツです。
EZ:これは殿堂入りだね。
Akeem:今だといくらぐらいで売れるんですかね?
EZ:高いよ。復刻とか出てるけど、復刻モノはもっとグラフィックがでかいし、後ろのプリントも無いもん。オリジナルのリリースは1987年だね。オープンカーにキャデラック、懐かしいな……。
Akeem:毎週、「アニマル・チンまだ入らないんですか?」ってスケートショップに聞きに行ってましたね。店員さん、うざったかっただろうな(笑)。
EZ:当時は1ドル240円とかの時代だったから、スケートビデオなのに1万円ぐらいしてさ。セールでも高かったもんな。
Akeem:誰かが買うと、買ったやつの家で、鑑賞会が開催されるんだよね。
YOPPI:俺はSTORMYで立ち見してた(笑)。
Akeem:字幕無し?
YOPPI:もちろん。全然意味は分かってなかった(笑)。
EZ:家で鑑賞できたのは海外にいたからでしょ? 日本ではみんなスケートショップで流れてるのを観てたよ。「いつか買ってやる!」って思いながら(笑)。
Akeem:あー、そうです。オーストラリアにいた時。
EZ:ダビングしなかった? 俺、スケートショップにあるビデオを持って帰って、ダビングしてた。
YOPPI:めちゃくちゃ分かる(笑)。良くやってた。
EZ:Powell PeraltaのPマークは”666″っていうダミアンマークでもあるんだよね。
Akeem:えっ!? Pが三つ重なってるんじゃないの?
EZ:単純にPを3つ重ねてるんだけど、逆から見ると”666″にも見えるじゃん。George Powellがインタビューで言ってたよ。
Akeem:へ~、何の変哲もないマークだと思ってたけど、そんな秘密があったとは。フロントのグラフィックは言わずもがなですよね? 色々なパロディも出ていますし。
EZ:今年着たい度は?
Akeem:残念ながら今回も0です! 着たら絶対破れちゃいます……(笑)。