対談:KID FRESINO(Fla$hBackS) × IO(KANDYTOWN)

by Mastered編集部

フッドである世田ヶ谷からその噂が広がっている総勢15人からなるKANDYTOWN。2014年に発表されたフリーのミックステープ『KOLD TAPE』、2015年にリリースされた限定のストリート・アルバム『BLAKK MOTEL』、『kurise'』によって、この新興ヒップホップ・クルーに注目が集まるなか、初のソロアルバム『Soul Long』をリリースしたばかりのラッパーIO。そして、昨年のアルバム『Conq.u.er』で一際輝きを放っていたjjjプロデュースの"Special Radio"に彼をフィーチャーし、『Soul Long』でも"Tap Four"のビートメイクとリミックスを手掛けたラッパー、ビートメイカーのKID FRESINO。共鳴しあう2つの才能が切り開くヒップホップの新時代とは果たして?

Photo:Shin Hamada、Interview&Text:Yu Onoda、Edit:Keita Miki

ホントにシンプルなことですよ。例えば、女の子に優しくするとか、人を見下さないとか、そういう積み重ねというか。(IO)

— 佐々木(KID FRESINO)くんは、前回、長期滞在中のニューヨークから日本に帰国した、その足で観に行ったライヴがIOくんとの最初の出会いだったとか?

KID FRESINO:正確にいえば、友達のDJから送られてきた”K14″のミュージックビデオをきっかけに、IOくんのことが気になるようになって。それで日本に帰る時、池袋BEDは何やってるのかな?って、マンスリー・スケジュールをチェックしたら、帰ったその日がIOくんのライヴだったから、行っちゃおうかなって感じで観に行ったんです。もちろん、その時点では、IOくん含め、KANDYTOWNには一人も知り合いがいなかったんですけど、ラッパーのGOTTZくんが話しかけてきてくれたので、後日、彼からIOくんの連作先を聞いて、いきなりメールしたんです。

IO:トラックと一緒に「フィーチャリングしてもらっていいっすか?」っていうメールが送られてきたので、「俺でよかったら」って返したんです。今まで、俺はそういう感じでフィーチャリングを頼まれることはなかったんですけど、いいビートだったし、彼の活躍は知っていたので、引き受けることにしたんです。

KID FRESINO:俺からすると、「フィーチャリングしてください」って連絡する前に、ビートをよこせよって思うんですよ。やるやらないは、そいつがどういうやつかじゃなくて、ビートの善し悪しで決めるわっていう。だから、自分の場合は、最初の段階でビートがないフィーチャリングのオファーは全部断ってるんです。そこはすごい重要だし、IOくんにフィーチャリングをオファーした時も一緒にビートを送ったんです。

— IOくんは佐々木くんと実際に交流する以前、彼のことはどう思っていました?

IO:接点はなかったんですけど、Flas$hBackSの一番最初のミュージックビデオで知って、俺とちょっと歳は違いますけど、近い世代で格好いいラップをやってる人がいるんだなって。

— KANDYTOWNは、去年秋に500枚限定のストリート・アルバム『Kruise’』をリリースしましたけど、そのビートを手掛けたnoshは佐々木くんの従兄弟ですよね。noshとは以前から繋がりがあったんですか?

IO:そのきっかけもFRESINOなんですよ。GOTTZとの話のなかで、noshのことも繋げてくれたんです。

KID FRESINO:noshはトラックのストックが100曲以上あるのに、それが全部俺のところに来て、他のところには送ってなくて。こいつ何なんだろうなって思いつつ、その中から俺が選ぶのは1、2曲だから、もったいないなって。noshはIOくんのビデオを観て、「これはスターだね」って言ってたこともあって、許可を取らずに(笑)、トラックのストックをまとめて、IOくんに送ったんです。

IO:それがフィールしちゃって、KANDYTOWN内で「俺がこの曲だ!」って感じで、トラックの奪い合い(笑)。こんなに使っちゃっていいの?って聞いたら、全然どうぞって感じだったんで、『Kruise’』では遠慮なく使わせてもらいました。

KID FRESINO:でも、今回の『Soul Long』では、なんで、noshのトラックを使ってないんですか?

IO:『Soul Long』では、なるべく今までやったことがないトラックメイカーとやってみるのも面白いと思ったし、noshはnoshで1枚その色に染めた作品を作ってみたくて。

KID FRESINO:まぁ、『Soul Long』のトラックの並びを考えると、noshのトラックが入るのはおかしいんですけどね。

— そして、話を戻すんですけど、佐々木くんからIOくんにフィーチャリングのオファーがあった曲は、jjjプロデュースの”Special Radio”として世に出たわけですが、この曲のミュージックビデオはIOくんがニューヨークに渡ったことで撮影が実現したんですよね。

KID FRESINO:あの曲のミュージックビデオを撮りたいとは思っていたんですけど、自分がニューヨークにいることもあって、叶わぬ願いだったんです。でも、IOくんがニューヨークに来るっていうから(笑)。

IO:ちょうど、その曲が入ったFRESINOのアルバムが出る前のタイミングで、たまたま、俺がニューヨークへ行く機会があったので、じゃあ、撮っちゃうか!って。

KID FRESINO:しかも、あの曲のヴァースはイーストハーレムにある俺の部屋で録ったんですよ。外では犬がずっと吠えてるし、録ってる部屋が小さすぎて、俺とIOくんでいっぱいになっちゃって、一緒にいた(KANDYTOWNのラッパー)菊丸くんは外で待ってたっていう(笑)。

IO:今回のアルバムに関しても、ニューヨーク滞在中にFRESINOから”Tap Four”を聞かせてもらって、「これ、ちょうだい」って、もらって帰ったのが、最初の取っかかりなんですよ。どういうアルバムにしようとか、どこからリリースしようとか、そういう話の前からその”Tap Four”を収録することだけは決まっていたんです。

— そう考えると、2人の出会いから、IOくんのアルバムまで繋がった流れがあったと。

IO:そうですね。ただ、今回のリリックを書き始めたのが、去年の11月だったんで、”Tap Four”のトラックをもらってから、時間が経ってしまったんですけどね。今回のアルバムのリリース日である2月14日は、KANDYTOWNの中心人物だったYUSHIの一周忌なんですよ。だから、そのタイミングで何かアクションを起こしたかったし、自分にとっても、いいきっかけにもなるかなって思ったこともあって、2月14日にソロ・アルバムを出そうと思ったんです。

— 作品を作るにあたって、どんなアルバムにしようと思っていたんですか?

IO:全く考えていなかったですね。

KID FRESINO:えっ!? マジっすか?

IO:うん。アルバム1枚でこういう見せ方をしようとか、そういうことはホント考えてなくて、集まったビート1曲1曲に思い浮かんだリリックが格好良ければいいというか、それがまとまった時にクールなアルバムになればいいなというくらい。普段から曲にコンセプトやテーマを設けることはあまりないし、自分が描いているのは日常の風景や流れなので、極端にいえば、ビートが違うだけで、全部同じことを言ってるんですよ。

KID FRESINO:大ネタ使いで、オーセンティックな感じというか、2016年の俺がやるのはこれですけど!っていう感じなのかと思っていたんですけどね。

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— エグゼクティヴ・プロデューサーのJASHWON、コ・プロデューサーのDJ NOBU a.k.a. BOMBRUSHのもと、MUROやMUMMY-D、DJ WATARAIといったプロデューサーが参加しているのも、オーセンティックなヒップホップを意識した布陣ではない、と。

IO:NASとかJAY-Zはずっと聴いてますけど、俺は、FabolousとかDipsetとか、2000年代中盤くらいのヒップホップがずっと好きだったりして、今回は90年代のヒップホップがやりたかったわけではなく、その時の自分がいいなと思ったのが、たまたま、そういうトラックだっただけなんです。

KID FRESINO:MUROさんプロデュースの”Soul Long”がヤバかったです。MUROさんのドラムはいつもキてるなって思ってて、ANARCHY氏とPUSHIMさんの”Magic Hour”のドラムとか、自分のなかでは泣けるレベルなんですよね。

IO:亡くなったYUSHIが、もともと、MUROさんと関わりがあって、そういう流れもありつつ、自分が好きで聴いてきたレジェンドと一緒にやるということは夢でもあって。まぁ、でも、このアルバムは、自分がクールだと思うことをやっただけですね。

— では、IOくんが考える、クールの定義とは?

IO:でも、それは言葉で説明出来るものではないというか、聴いてもらった人それぞれが俺にとってのクールを感じてもらえばいいし、あとはホントにシンプルなことですよ。例えば、女の子に優しくするとか、人を見下さないとか、そういう積み重ねというか。

KID FRESINO:ヒップホップのインタビューで“女の子に優しくする”って発言が出てくるのよくないですか?

— 思ってなければ、出てこない発言なんでしょうし。

KID FRESINO:あと、そう思ってても、言わない、とか。でも、IOくんの口からそういう言葉が出ると、押忍って感じです(笑)。

— 佐々木くんはヒドいことばかりラップしていますもんね。

KID FRESINO:ホントっすね。

IO:嘘つきまくってる?

KID FRESINO:もう、出身地とかも嘘だったりする時もあるし(笑)。でも、自分が出た雑誌はチェックしますから、その時、全部同じことが書いてあったらつまらないじゃないですか。

IO:でも、そういうところもヒップホップかもね。ヒップホップっていうのは、プレイヤー自身が楽しんでいる事も重要だと思うし。

— では、IOくんにとって、ラップの楽しさはどこにあるんでしょうね?

IO:俺にとっては、日々を切り取って見せるものでもあるし、自分たちのクールさを表現するものの一つでもあると思うんです。考え方によっては、時計とかファッションとか、そういうものと通ずる部分がある。15歳からずっとラップをやってきて、それが俺にとって当たり前の日常だし、生活の一部なので、ラップを舐めてるわけじゃないんですけど、あまりに近い存在なので、ちゃんと考えたことがないんですよね。

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— 佐々木くんはIOくんのラップについて、いかがでしょう?

KID FRESINO:俺は楽器だと、サックスが一番好きなんですけど、曲にサックスを足すと、「音が濡れる」って言うじゃないですか。IOくんのラップもその声にサックスと同じものを感じたんですよ。それからリリックの情景描写。自分のなかでは官能小説を読んでるような感じがあるし(笑)、繋がるはずのない言葉をつなげるところもすごいですよね。アルバムの曲ではないんですけど、「チープ・シャンペンで明日を満たし / 開く濡れたメモリーレイン」っていう一節がすごい印象に残ってて、何なんだろう、この人って思ったんですよね。意味が分からないけど、なんか想像出来るじゃないですか。夜の街で信号の色が雨に濡れた路面に映ってる、みたいな、そういう絵が見えるんですよね。

IO:見えるもの、思ったことをいかにダイレクトに言わないか。そのちょっと手前で止めておいて、あとは想像させる、そういうところが面白さでもあって。自分を含め、KANDYTOWNのみんなはずっと洋楽を聴いてきたんですけど、どんなことを歌っているのか、さっぱり分からないのに、想像させるものがあるというか、自分で勝手にストーリーが作れるし、歌から拾った単語から内容を想像してきたので、それを日本語で出来たらいいなって思っているんですよね。

KID FRESINO:俺は最近の何でもシンプルに言ってしまえばいいっていう風潮がすごいイヤなんですよ。そんななか、また違った角度からラップするIOくんと出会えて、すごい嬉しかったんですよね。

— “Tap Four”のリミックスで佐々木くんが披露しているラップも、IOくんに触発された今までにないものですよね。

KID FRESINO:それをやらないと意味ないし、ラップを楽しみたいし。

IO:しかも、時間に全く余裕がないなか、”Tap Four”のリミックスもお願いしたんですけど、自分でヴァースを録って、速攻で送り返してくれて。

KID FRESINO:1日でしたね。

IO:あれはありがたかったな。

KID FRESINO:いや、それは分かりますよ、2月14日のリリースから逆算したら、スケジュールがヤバいのは(笑)。オファーをもらった時、友達の家で遊んでたんですけど、その場でヘッドフォンして曲を聴きながらリリック書いて、帰ってから、すぐに録音しましたからね。その時、確か、IOくんから「俺はクールだぜ。君って、素敵だねっていうテーマでよろしく」って言われたんですよね?

IO:FRESINOから「コンセプトはあります?」って聞かれたんですけど、いつも言ってるように、自分にはそれしかないんで(笑)。

KID FRESINO:そう言われたら、IOくんの期待に応えたいじゃないですか。それと、以前はいかに悪く言うかしか考えてなかったんですけど、今の自分には書けないテーマがないんですよね。おばあちゃんの話でもラップ出来るようになってきて。だから、今回もまた一つの挑戦だったんですよね。

— なるほど。

KID FRESINO:まぁ、人のこと悪く言うのは、普通に考えたら、よくないことなのは分かっているんですけど、ラップはそれが許容されている音楽でもあるし、言ってもいいんじゃないかなとは相変わらず思っていて。だって、ラップって、その相手を前にして、悪口が歌えちゃう音楽ですからね。しかも、ライヴが終わったら、知らん顔して、「おつかれっす!」って言える、そういうラップのヤバさはやってないと分からないというか(笑)。

IO:俺らも仲間に向けた曲が多くて、そうやって曲を通じて、お互いに分からせあうのも刺激的で面白いんですよね。

KID FRESINO:KANDYTOWNは自分たちの城を作って、中だけでやってるんですね。

IO:そう。だから、城を作って、その外に歌うんじゃなく、中に向けて歌っているから、それが外の人に広がっていってる今の状況がすごく面白くて。

KID FRESINO:じゃあ、KANDYTOWNは仲間でもあり、ライバルでもある、みたいな? しかも、みんな、それぞれが一番になりたいと思ってる節がありますよね。

IO:そうだね。俺らはフッドに認められたいと思っていて、一千万人に格好いいねって言われるより、フッドの一人にクールだねって言われるほうがアガるし、そんな俺らのなかで一番を取ったら、外でもやっていけるよねって。そういう意味で、KANDYTOWNはライバルでもあるし、そのなかの誰かが何かをやろうとしたら、サポートもするし、そういう感じなんですよね。

KID FRESINO:次のリリースはどんな感じなんですか?

IO:EPだったり、自分の作品もやりつつ、まずはKANDYTOWNのアルバムが先かな。KANDYTOWNは、いつも一緒に遊んでいるなかで、バッっと作るんですけど、そういう感じで出来れば、そんなに時間はかからないはずだし、1年に1枚のペースで何かしら出したいなとは思ってますね。

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【IO『Soul Long』】
発売中
(P-VINE / BCDMG / PCD-28028)
価格:2,800円 + 税

■TRACKLIST
1. Check My Ledge feat. YUSHI
Produced by MASS-HOLE
2. Play Like 80’s
Produced by Neetz
3. Tap Four
Produced by KID FRESINO
4. So
Produced by DJ WATARAI
5. Here I Am
Produced by OMSB
6. 119measures feat. KANDYTOWN
Produced by Gradis Nice
7. Plush Safe He Think
Produced by Mr. Drunk
8. Soul Long (skit)
Produced by YUSHI
9. Soul Long feat. BOO
Produced by MURO
10. City Never Sleep
Produced by JASHWON
-Bonus Track-
11. Tap Four (Remix) feat. KID FRESINO
Produced by KID FRESINO
12. Dig 2 Me (Remix) feat. Big Santa Classic, MUD
Produced by JASHWON

All Songs Mixed by I-DeA for flashsounds @FLS 5th Lab
Executive Producer:JASHWON
Co. Producer:BOMBRUSH

http://p-vine.jp/music/pcd-28028
http://www.bcdmg.jp/
http://kandytownlife.com/

【BCDMG presents Tale Of City – IO 『Soul Long』 Release Special】
開催日時:2016年3月25日(金) OPEN/START 23:00
開催場所:代官山UNIT & SALOON
料金:2,500円(前売り/ドリンク代別)、3,000円(当日/ドリンク代別)

RELEASE LIVE: IO (KANDYTOWN/BCDMG)
LIVE: KANDYTOWN / BCDMG
DJ: MURO / オカモトレイジ (OKAMOTO’S) / NOBU a.k.a BOMBRUSH! / MASATO / WELLOW / KORK
& More Special Guests..

2月27日(土)よりローソン・チケット、e+等にて前売チケット発売開始。