Photo:Takuya Murata | Interview&Text : Yu Onoda | Edit:Keita Miki
※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)
— ご自身でオーガナイズする『FLATTOP』やGEZANのマヒトくんと共同開催している『BODY ODD』を中心に、YELLOWUHURUの神出鬼没なDJやパーティオーガナイズ、そのオルタナティブな音楽観のルーツは?
YELLOWUHURU:もともとは10代の頃、ハードコアが好きで、ドラマーとしてバンドをやっていたんです。そこからノイズ、アヴァンギャルドをはじめ、色んな音楽を聴くようになり、レコードは買っているけど、頻繁にDJはやっていないという状態だったんですけど、スタッフとして働いていた渋谷のWWWで2015年にパーティをオーガナイズすることになり、そのパーティが今も続いている『FLATTOP』。当初、自分はオーガナイズに徹していたんですけど、どこかで僕のDJを聴いてくれたカレー屋まーくんが「じゃあ、来月からよろしくね」って声をかけてくれて、当時、Aoyama Tunnelの土曜日にやってたレギュラーに誘ってくれたことをきっかけに、オーガナイズだけじゃなく、DJもちゃんとやっていこうと思ったんです。
— クラブミュージックに開眼したきっかけは?
YELLOWUHURU:WWWの先輩に連れて行ってもらった青山・蜂のSTONE63のパーティで聴いたDJ KENSEIさんのINDOPEPSYCHICSセットですね。そこからクラブミュージックが好きになっていったんですけど、もともとの自分のルーツはハードコアだし、東京のシーンはジャンルが細分化されていることもあって、『FLATTOP』では、バンドやラッパーのライブを交えて、クラブミュージックに限定されないクロスオーバーなパーティをやりたいなと思ったんです。
— パーティ名の『FLATTOP』には色んな意味があると思うんですけど、ひとつは1980年代中期のヒップホップシーンで一世風靡したヘアスタイルのことですもんね。
YELLOWUHURU:そうですね。日本語だと、角刈りとか。あと、調べたら、”航空母艦”という意味もあって、色んな飛行機が留まる母艦のイメージは自分がやろうとしているパーティにぴったりかもしれないなって。名付け親はWWWで一緒に働いてた、baduerykahとかフルフェイスってバンドをやってる死体っていう友達なんですけど(笑)。
— ”FLAT”という言葉は理想的な音楽の在り方を指してもいるんでしょうし。
YELLOWUHURU:そうそう。初回のパーティを準備していた時、当初、灰野敬二さんの不失者とにせんねんもんだい、FLYING RHYTHMSというラインナップを考えていたんですけど、二転三転あって出てもらうことになったOMSBの髪型もまさにフラットトップだったし、ジャンル分けやオーバーグラウンド/アンダーグラウンドの壁を崩して、「全部フラットでいいじゃん」という思いを込めてパーティ名を『FLATTOP』にしました。
— 不失者からOMSBって、まさに『FLATTOP』らしいフラット感というか、激変ぶりですね。
YELLOWUHURU:はははは。結局、初回は構想していたラインナップからがらっと変わり、2フロアに、THE LEFTY、OMSB、Hi’Spec、青葉市子、DREAMPV$HER、DJ威力、DJ DISCHARGE、MURAKAMIさんが出演してくれたんです。そういうクロスオーバーな音楽性はWWWで働いていた経験も大きくて、毎日やってるライブやパーティを通じて、色んな音楽を知ったり、遊んだりするようになったことで視野が広がりましたし、その後、パーティのオーガナイズを重ねるなかで、色んな人との出会いもあり、『FLATTOP』自体はバンドよりヒップホップ色が色濃くなっていって、ラッパーやビートメイカーの友達が増えていったんです。
— そんな流れを受けて、SIMI LABのOMSB、Hi’Spec、USOWAと立ち上げたレーベル、GHPD(Gami Holla Production Development)によって、YELLOWUHURUの名は知られるようになりましたよね。
YELLOWUHURU:OMSBたちは同い年だったこともあって、『FLATTOP』への出演をきっかけに一緒に遊んだり、仲良くなっていって。1年くらい経った頃に「レーベルをやりたいんだよね」という話になり、「じゃあ、やろう!」と。GHPDはOMSBたちの軸にあるヒップホップをベースに、Hi’Specはダンスミュージックやアンビエントにも興味があったりするし、そこに自分の実験性やクロスオーバーな感覚を加えることで、ゆくゆくはヒップホップの枠を飛び越えられたらいいなって。それでまずは、2018年にOMSBのミックスCD『MONO TRIP GUMBO』と自分のミックスCD『T.3.T』をリリースしつつ、GEZANのレーベル、十三月の甲虫からGEZANとGHPDのスプリット7インチシングル『BODY ODD』を出したんです。
— GHPDとGEZAN、Campanella、odd eyesのカベヤくんといった面々が参加した『BODY ODD』は重要な作品ですよね。そして、『BODY ODD』というのは、GEZANのマヒトくんとYELLOWUHURUが主催するパーティ名でもあるという。
YELLOWUHURU:マヒトとは、初回の『FLATTOP』のプロモーションで、『EL NINO』にフライヤーを配りに行った時に初めて話しかけられたんですけど、「何で、このメンツに俺の名前がないんや」っていきなり言われて(笑)。その時点でGEZANのことは名前を知っている程度の認識だったんですけど、その後、2016年にGEZANのドラマーが脱退する直前のライブを見たら、結構くらって。その後、新たなドラマーを募集していたので、自分も応募してみたんですよ。でも、スタジオに入ったら「ドラム、めっちゃ下手やん」って(笑)。
— はははは。
YELLOWUHURU:マヒトは同い年ということもあり、それをきっかけに付き合いが始まって、『FLATTOP』でマヒトと呂布カルマの2マン・ライブを企画したり、一緒に遊ぶようになったんです。そんななか、青山のクラブ・蜂から2017年6月9日にイベントをやらないかと持ちかけられて、”ロックの日”だから、俺と同じく、ハードコアだったり、色んな音楽が好きなマヒトを誘おうと。それで俺とマヒト主催で、Campanella、Hair Stylistics、THE LEFTY、Hi’Spec、Shhhhh、矢部直さんといった面々を迎えたパーティ『BODY ODD』を始めて、その後、都内だと、WWW、Contact、heavysickZERO、それから7インチを出した時に東名阪ツアーとか、今までに10回くらいやったのかな。そのうちに『FLATTOP』で打ち出していたクロスオーバー感覚は『BODY ODD』が引き継いで、『FLATTOP』は”ハウスミュージックと実験性”を軸に、電子音楽、ダンスミュージックに特化したパーティとして、矢部直さんや1-Drinkさん、CONOMARKさん、blacksheepのSungaさん、Mayurashkaなんかをフィーチャーしつつ、今年9月から青山ZEROで隔月開催になりました。
— YELLOWUHURUがDJやパーティオーガナイズで生み出す場はいい意味で音楽が音楽らしく混沌としていると思いますが、その源はルーツにあるハードコアの影響なんでしょうか?
YELLOWUHURU:これまで自分が衝撃を受けたり、影響を受けてきたものは混沌としたものが多かったのは確かで。例えば、RAW LIFE。実際に体験することは出来なかったんですけど、どういうイベントだったのか、その音楽の在り方を知って大いに触発されましたし、高校3年の時に聴いたにせんねんもんだいのアルバム『ろくおん』や『FAN』、ボアダムス、ヒップホップもそうなんですけど、その場に渦巻くエネルギーに惹きつけられるんですよね。名古屋のRC SlumやMdMも同じで、Ramzaとかは音楽を聴く感覚みたいな話が一番出来るし、OMSBの音楽に惹かれるのもめちゃくちゃヒップホップなんだけどその枠をはみ出す何かを感じるから。そういうはみ出す感覚って、上の世代にとっては当たり前だと思うんですけど、今は音楽が細分化されていているように感じるんです。特に東京はそれが強い感じもする。じゃあ、自分がはみ出すやつやれたらいいなって。しかも、そういう感覚をアウトプットする器として、ハウスミュージックとジャズに出会ったことが自分にとっては大きかったですね。
— あらゆる音楽を内包した大きな器としてのハウスの折衷性はよく知られていると思うんですけど、ジャズにも同じものを感じる、と。
YELLOWUHURU:そうですね。ジャズの自由度の高さを実感させてくれたのが『FLATTOP』や『BODY ODD』で頻繁にDJをお願いしている矢部直さんなんです。僕にとってはハードコアにも近い混沌具合というか、矢部さんからは「全然違う世代の音楽を合わせて1曲にするのがDJなんだ」と言われて、自分は自由になれたというか、そういう視点で色んなDJを聴いてみようと思えるようになれたんです。
— ハードコア、ハウス、ジャズ。表向きの形態は違うかもしれないけど、ぐっと掘り下げた先で出会う音楽の自由度の高さや解放感という点では確かに近いものがありますよね。
YELLOWUHURU:自分にとって大事なのは、音楽によって、自分が肯定されるような、救われるような感覚なんですよね。ダンスミュージックのルーツであるディスコがかつてマイノリティの救いの場であったように、大袈裟な意味ではなく、そこに行ったら救われるような、そういう場になったらいいなって。今年9月から青山ZEROで『FLATTOP』の隔月レギュラーを始めたタイミングで、出演DJのミックスを紹介するFLATTOP MIX ARCHIVEも立ち上げたので、その音源をチェックしつつ、気軽に遊びに来てもらいたいです。
— では、最後にMastered Mix Archivesに提供してくれたDJミックスについて一言お願いします。
YELLOWUHURU:1曲目のIgaxx、CICAってDJと3人でやっているDJトリオの名前の由来のSUN RAの”LANQUIDITY”と本当にハウスDJとして最高だと思うphoneheadが高円寺knockでかけてて知った、締め曲のdj klockとテニスコーツによるエレクトロニカ・ユニット、cacoyの”mural of music”が最高なので全部聞いてみてください!
開催日時:2020年1月10日(金) OPEN / START 22:00
開催場所:Aoyama Zero
料金:1,000円(前売)、1,500円(当日)
■出演
・Guest DJ
YOUFORGOT
nutsman
・DJ
bungo
Desko Deska
riku
YELLOWUHURU