秋も深まる中、開催真っ最中なのが大分県・国東半島の国東半島芸術祭だ。渡来の文化と土着の文化が混じり合うことで独自の文化が育まれてきたという大分県国東半島。独特の地形と文化が織りなすこの場所で、アーティストの持つ新しい感性と、国東半島の土地の力や歴史・文化が出会うことで、ここでしか鑑賞・体験できない作品を創造しようという画期的な芸術祭となっている。
チームラボが参加型デジタルアート作品「花と人、コントロールできないけれども、共に生きるーKunisaki Penisula」を発表しているのをはじめ、それぞれのアーティストが土地や自然、景観に触発されながら作品を生み出し、また自然との融合をはかるダイナミックな作品を試みている。
芸術祭会期中は、パフォーマンスやトークショーなどイベントも目白押し。ここにしかない魅力、場所が持つ力と出会う「旅としての芸術祭」を提案している。
各会場の風景や作品を撮った最新オフィシャル写真を参考に、ぜひ旅の計画を練ってみてはどうだろう。
というわけで、まずはチームラボ代表の猪子寿之・代表が語る“国東半島芸術祭の魅力”について耳を傾けるとしよう。
猪子:国東半島芸術祭は、日本全国いろいろな芸術祭が活発になっているなか、かなりハードコアな芸術祭だと思います。僕らチームラボが参加させてもらうにあたっては、めちゃくちゃデカい作品を発表しまして、恒久展示になるんです。
まず、国東半島という場所自体が相当ユニークなんですね。“磨崖仏(まがいぶつ)”っていって自然の岩壁に彫られた仏像があるんですけど、日本全体から見て約7割が大分県に集中してるんですよ。例えば、京都とか奈良には、ちゃんと完成された仏像は沢山あっても、磨崖仏はぜんぜんない。で、その磨崖仏のほとんどが国東にあるんです。
もともと切り立った山に囲まれていて、海路を使わないとなかなか行けないような陸の孤島状態だったところから、独自の文化が育まれたみたいで、奇祭なんかも受け継がれているんですよね。あとは、1000年前からある田んぼがそのまんま使われていたりする。人が手を入れた自然——英語の“ネイチャー”って意味はアラスカの大自然のような人の手が入っていないことを表すんだけど、日本人は人が手を入れて居心地よくしたような田園風景とかも“自然”っていうんですね。同じ自然でも、そこには大きな違いがあって。日本人は手を入れてより良い環境になったものを自然と見なしていて、それを”人里“とも言うんだけど、ここまで人里が完璧に残っている場所って全国でも国東半島くらいなんです。だから、1000年もの間、外部エネルギーに依存することがないまま、森のエネルギーだけでまかなえてきた。だから、そこには自然のエネルギーが循環されているんです。人間が適度に手を加えているおかげで、自然と人間のお互いにとって都合のいい快適な状態になってるんだよね。それは誰かのコントロールではないんです。
例えば、畑っていうのは人間の指揮系統にあるという前提です。だけど、指揮系統は我々では自然が持ってるんだけど、人間が手を加え続けることによって初めて成り立つもの。例えば、人間の村にあった桜や花の種とかが自然に飛んでいって、そこらじゅうの森で花を咲かせたりしている。そういった現象こそが国東の最たるもの。だから、文明と自然っていうのは、国東では対立概念じゃなくてもっと曖昧な概念なんです。近代では普通は対立概念として考えられていて、西洋ではそれが主流なんです。でも、日本では対立してない。だから、みんなが想像している自然よりも遥かに居心地がいい自然なんです。この間、春にいったんですけど、一言で言うと、めちゃくちゃ気持ちよかった。気持ちよくなり過ぎちゃったくらい(笑)。
まあこの話するとちょっと長くなるし熱くなっちゃうんで。ちょっとだけ話をすると、チームラボの作品を作るにあたって、まず自分が国東半島で感じたようなことを、鑑賞者の方々が家に帰るまでに考えるきっかけになってほしいと思ったんです。せっかく国東半島でやるんで、この作品に来る時も通るし他の作品に向かう時も国東半島を通るので、その時にそれぞれが“人と自然との関係”を考えるきっかけになったらいいなと思って作ってます。
なので、作品のタイトルも『花と人』。鑑賞者も含めて一個の作品っていうイメージで作っていて、それをより分かりやすく体感してもらうために入り口は鏡になっています。自分が結構しっかり映り込むんで、自分と作品の花とがちょうど境界線が分からないような、鑑賞者である自分も含めてそれが一個の作品っていうように感じられる作品が出来たらいいなと思ってこういう風に作っています。
自然と共に花が生まれて自然に花が咲いて、で寿命が来たら散って。人が近づくと散るんですが、散ると空間が空くので、空いた場所の影響を受けて勝手に分布して。花が咲いては散っていくっていう作品で。ずーっと見ていても延々と移り変わっていくので、今この瞬間の絵というのは二度と無い。で、全体でずっと延々と変わるんですけど、大枠一時間で大体国東半島の一年間の花の移り変わりがあってですね、1月、2月、3月と12月までの一年間、大体約5分間ずつ、移り変わっていく。例えば、初めは1月の花。で、5分経てば大体2月の花が生まれっていうような、そういうような作品です。なので、時間があるとき一時間くらい見て頂けると、作品全体が見えます。で、さらにもう一時間見ても、初めの一時間とはまた違った一年間になるので、延々と見続けてもまた違った景色が見えるというように作っています。
作品の概要はお解りいただけただろうか。ちなみに作品制作にあたって猪子氏が国後半島を初めて訪れたときは3月末。桜と菜の花、そして自生している名もない花も含めて圧倒的な量の花々が咲き誇っており、大きな刺激を受けたという。11月の今頃はコスモスなども多く見れそうだ。チームラボを初めとする各地の展示を鑑賞しつつ、ぜひ国東半島が誇る“人里の自然”にも触れて欲しい。
【展示概要】
国東半島芸術祭
会期:2014年10月4日(土)~ 11月30日(日)
会場:真玉海岸海水浴場北側300m(大分県豊後高田市臼野)
開館時間:10:00〜17:00(最終入場16:30)
休館日:水曜日
観覧料:詳しくは公式ホームページをご覧ください。
http://kunisaki.asia/matamaproject
■国東半島芸術祭
http://kunisaki.asia