ジャスティス『ア・クロス・ザ・ユニヴァース』

by Mastered編集部

はじめまして。これからコラムを書かせていただきます、スタイリストの今井康晴と申します。
洋服と音楽の繋がりをキチンと提案していければと思っておりますので、気が向いたときにでも覗きに、遊びに来て頂ければと思っております。

それではさっそくコラムの一発目は、エレクトロ・サウンドの今を切り取った作品のコチラをご紹介!

 

ジャスティス『ア・クロス・ザ・ユニヴァース

このDVDはライヴやDJ、音からだけでは伝わることの無かった彼らの内面まで覗くことの出来る、ツアー・ドキュメントDVDである。
2008年春頃に行われた約3週間のUSツアーに、映像監督のロマン・ガブラス(Romain Gavras)とソーミー(So-Me)が、ステージ上だけでなくプライベートにまで密着していという、ファンならずとも必見の内容だ。

ここ数年で盛り上がりを見せてきているエレクトロ・ミュージック(エレクトロ・ハウス、エレクトロ・ロック)であるが、ツアーそのものは所謂ロックスター然とした内容だ。別荘を買いに行ったり、女の子と豪遊したり、ホテルでやんちゃしたり、果ては暴力沙汰で警察のお世話になったり(!!!)。
ツアー前半はキーボードを弾いたりと終始ゴキゲンなのですが、ツアーが終盤になるにつれ疲弊しきって余裕がなくなって行き、身も心もボロボロになっていく彼らを隠すことなく、あえて曝け出しており、飾ることのない姿を捕らえることに成功している。
いまやトップアーティストの彼らがこのようなことを行うのは、今も水増しされ続けているエレクトロのへのアンチテーゼでもあり、ネクスト・ステップを見据えてのものではなかろうか?

このDVDではロック・キッズ、ニュー・レイヴの格好をしたお客さんの中に、B-BOYのお客さんも見ることが出来たし(そして、そこを意図的に数秒間映していたり)、ジャンルを飛び越えて支持される新たなロック・スター像を描き出そうとしている。
確かに、ジャスティスの生み出すビートがヒップホップ畑の人達にも受け入れられるのは不思議ではない。
そう!ここ日本でもDJ BAKUがたびたび“Waters Of Nazareth (Erol Alkan’s Durrr Durrr Durrrrrr Re-Edit)”をスピンし、フロアを熱狂に導いていたのが証拠である。
逆に、現在のヒップホップではニーヨ(Ne-Yo)の“Closer”に見受けられる、四分打ちへの接近もあるので、ジャンルを飛び越え、そして巻き込み、ますます大きな現象になるのではないかと期待が膨らんでしまう。

そして、このDVDにはライヴCDがセットになっており、音源としても楽しめるようになっているのがニクイ所だ。
10月中頃に行われた「GAN-BAN NIGHT ’08」でのセット(こちらはCDとは違いDJ)は、自身の音源を四分打ち仕様に造り直していたり、エレクトロDJによく見られる1曲での盛り上がりを誘うのでは無く、90分の流れを意識し(後半のヒットパレードはご愛嬌でしたが)、グルーヴに重きを置いた地味でストイックな内容であった。これまでに朝霧JAM、フジロック&今年の単独公演を観て来ていますが、その中でもダントツに素晴らしい内容であったし、この夏にリリースしているMGMT「Electric Feel」のリミックスも文句なしに良い仕上がりなだけに、DVDだけでなく新曲でアクションを見せて欲しいと思うのは贅沢すぎるのか?

Justice – A Cross The Universe DVD Trailer

参考サイト
http://www.myspace.com/edbangerrecords
http://www.myspace.com/etjusticepourtous
http://wmg.jp/artist/Justice/index.html


そして、ここ日本でもエレクトロの盛り上がりは著しく、夏の野外フェスでもエレクトロ勢が多くブッキングされ、エレクトロが定着しジャンルとしても確立し、一つ目のピークを迎えた感のある本年度。
そして10月には「DIESEL XXX」や「GAN-BAN NIGHT」など大型パーティも開催され、ここ日本でも一つの転機を迎えた。

テクノやハウスよりもエナジー溢れるこのジャンル、次のターニングポイントになるのはジャスティス、デジタリズム、そしてシミアン・モバイル・ディスコのエレクトロ御三家によるセカンド・アルバムのリリースだろう。
このMySpace時代、音楽の消費される速度がひたすら加速する中で、エレクトロというジャンルが進化の問われる年になるに違いない。

コピーし薄めただけのオリジナリティがないシーンが続いてしまうのは困るし、一時期のブームでは終わっても欲しくない。
いつでも海外のアーティストに直接コミュニケート出来るこんな時代だからこそ、80kidzのようにワールドワイドに活躍して欲しいものだ。
しかし、ここ日本ではアイドルとこのジャンルを組み合わせて、何だか独特の文化を遂げている。まぁ、それはそれで音楽が盛り上がればいっか……。