MasteredレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する「Mastered Mix Archives」。今回登場するのは、それぞれが人気アパレルブランドのスタッフでもあるTakeとHisashiからなる人気若手DJデュオ、Monkey Timers。
ディスコ・ダブ、ニュー・ディスコ以降のダンス・ミュージック・シーンの新たな局面を切り開く彼らは、ChidaやForce Of Natureらの強力な後押しを受け、Rub N TugやStill Going、Prins Thomas、Todd Terjeらのサポートを務めるなど、ディープな現場経験を積み重ねながら、最新作『FUTURE KLUBB』を含む3枚のミックスCDが幅広い支持を獲得。昨年末には、The Backwoods a.k.a. DJ Kentによるリミックスをフィーチャーしたピークタイム・トラック「MONK」をリリースしたばかり。今まさに勢いに乗る彼らのDJミックスとインタビューをお楽しみください。
※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)
バック・トゥ・バックが楽しいのは、ライヴ感だったり、ハプニングが起こるところ。一人できっちり繋いでいくより全然楽しいんですよね。(Hisashi)
— もともと、2人は学校の同級生だったんでしたっけ?
Take:そう。専門学校の同じクラスだったんです。お互い唯一気が合って、通ってた2年間はほぼ2人でいたという。
Hisashi:そう、毎晩遊んでましたね。
Take:といっても、ウイニングイレブンなんですけどね(笑)。
— 毎晩、クラブに通ってて、「DJやろうか?」って話になったわけじゃない、と。
Take:あ、いや、クラブにも行ってました(笑)。
Hisashi:AIRとかみるくとか……。
— クラブ・ミュージックと出会う以前、Takeくんはロカビリーを聴いていたとか。
Take:そうです。中学生の時はメロコア・ブームでハイスタとかを聴いてたんですけど、高校に入ってすぐの時期にストレイ・キャッツに衝撃を受けて、ロカビリーを聴くようになって。あとはスペシャルズとか……。
— つまり、クラシックなルード・ボーイ・ミュージックがルーツにあると。
Take:ですね。あと、当時、バンドでベースとヴォーカルをやってて、まぁ、今考えると、めちゃダサいんですけど(笑)。
— クラブ・ミュージックにハマったきっかけは?
Take:クラブへ遊びに行きたいなと思った時、友達はヒップホップばっかり聴いてたので、まずはヒップホップのパーティへ遊びに行ったんですけど、上手くハマらなかったんです。ただ、高校生の頃から洋服が好きで、地元、岡山のBALANCEへ通っていたんですけど、お店主催でハウスのパーティをやったり、店内でもそういう音楽をかけていて、ジャンルはよく分からないなりに「何なんだろうなー?」とは思っていたんです。それで東京の専門学校に通うようになった2005年にRub N TugとMichael K、Paul TがDJで参加したSTUSSYのMAJOR BLADEツアーへ遊びに行ったことをきっかけにレコードを掘り始めたんですよ。
— どういう部分にグッと来たんですか?
Take:最初は弱々しいイメージがあったんですけど、DJを聴いたら、めっちゃワルさを感じたところですかね。Rub N Tugは、六本木のCOREでやった翌年のLIFE PARTNERツアーにも遊びに行ったんですけど、DJやりながら二人がケンカしはじめて、その間に曲が終わっちゃったんですよ。で、しばらくの無音状態から、トーマスがバーンって曲をかけた瞬間、フロアが「ウワーッ」となって。そういうラフなノリがグッと来ましたね。
Hisashi:あと、Rub N Tugなんかはまさにそうなんですけど、オールジャンルでプレイする感覚。しかも、きっちりつなぐというよりは、ライヴ感があるところですかね。
— そして、Takeくんは学校卒業後にBALANCEヘ入社するんですよね?
Take:そう。そこで(balの)EDAさんとKABAさんが店内用のBGMに選んだハーヴィーのミックスCD「Sarcastic Study Masters Vol.2」をずっとかけてたんですけど、あれは、いわゆる、ハウス、ディスコのミックスではないので、最初、その良さが全く分からなかったんですよ。
— あの作品はイタリアのコズミックをハーヴィーなりに解釈したオブスキュアな内容ですから、確かにいきなり聴いたら、分かりにくいかも。
Take:でも、ずっと聴いているうちに、「これスゴくいいかも」って思えるようになったし、あとはRub N Tugの『Campfire』ですね。あのミックスCDも店内でずっとかかってたんですけど、「やっぱり、こいつらスゲえかも」って思ったり。そう考えると、毎週、クラブに通うようになったのは、入社してからかもしれないですね。
— Hisashiくんは福岡出身なんでしたっけ?
Hisashi:そうです。Takeと同じく中学の時はメロコア、高校に入ってからは兄貴の影響でヒップホップ。ジュラシック5やザ・ルーツ、サウンド・プロヴァイダーズなんかを聴いてました。当時、ターンテーブルは持ってなくて、CDで音楽を聴いていたんですけど、上京して、専門学校へ通っている時にターンテーブルとミキサーをもらって。学校卒業後、HEAD PORTERに入社するんですけど、お店の裏にCDが山積みになっていて、そこにはハーヴィーからマイロ(=DJネイチャー)、マッド・プロフェッサーから、色んな音楽があったので、そういう音楽を聴きつつ、レコードを買い始めるようになって。レア・グルーヴとかアシッド・ジャズ、そこにハウスを混ぜたりするようなDJを始めるんですけど、そこにTakeの影響でテクノ寄りの音も混ざっていったという。
Take:半年間、2人で一緒に住んでいた時期もあるよね。
Hisashi:その時期の音楽体験は重要なポイントかもしれない。
— ヒップホップからハウス、ディスコの流れはスムーズだったの?
Hisashi:ではなかったんですけど、会社に入って、藤原ヒロシっていう人が過去にやってきた音楽を知って、そういう感覚が理解出来るようになりました。
— なるほど。2人はDJとしてのヒロシさんを知らない世代なんですもんね。
Hisashi:そうですね。ミックスCD「Klubb Syndrome」でマルコム・マクラーレンの「World’s Famous」を使ったりしているのも、そういう影響だったりしますし、DJを始めたきっかけというのも、fragment designのKOJIROさんに夜遊びで連れ回されて、遊び方を教えてもらったことが大きかったり。そういう周りの環境から受けた影響は自分にとって重要ですね。
— Monkey TImersのセンスは環境に育まれたと。
Take:そうですね。そういう話で思い出すのが、ある時、BALANCEの事務所に行ったら、奥の個室でうちのEDAから「DJ教えてやるよ」みたいなことがあって。延々と同じようなダブテクノを聴かされて、「EQはこう変えていって……」みたいな。その部屋に一回入ると出られないっていう(笑)。あの時、Hisashiもいたよね?。
Hisashi:うん、いた(笑)。
Take:EDAさん、KABAさんには、ディスコ・ダブから入った僕らにも聴ける、かっこいいダブテクノをたくさん教えてもらいましたね。
— Monkey TImersとして、一緒にDJするようになったのはどういうきっかけなんですか?
Take:中目黒の笑笑ですね。
Hisashi:二人で飲んでた時に、「Rub N TugやIdjut Boys、Force Of NatureやTraks Boys……格好いいDJはみんな2人組だよね」って話になって、「じゃあ、やってみるか!」って。
— 名前の由来は?
Take:とにかくダサい名前をつけたかったんですよ。で、”MONKEY"って言葉自体がダサいし、あと僕、スペシャルズの「Monkey Man」って曲が好きなんですよ。あと、"TIMERS"は笑笑の取り皿に書いてあった単語ですね(笑)。よし、これで行こう!って。
— そして、ユナイテッドアローズに「monkey time」というレーベルがあることを後から知る、と(笑)。
Take:そうなんですよ。あれはびっくりしましたね(笑)。UAの方に「ありがとうございます!」って言われて、「ホントすいません」って感じなんですけど(笑)。
Hisashi:しかも、一時期、Wikipediaか何かで、忌野清志郎さんのThe Timersの項目に何故か僕らのことが書かれていて(笑)。
— てっきり、そこは意識して付けたものだと思っていたんですけど……
Take:もちろん、The Timersも好きではあったんですけど、たまたまですね。なんか色々重なっちゃって(笑)。
— 2人でDJするのは、どういうところが面白いんですか?
Take:僕もHisashiもあんまり頭が良くないので、一緒にやってると、1人は出音だったり、フロアの状況が見られるじゃないですか?そこで相談しながらプレイ出来るので、「次、これかけようと思うんだけど……」「いや、違うんじゃない?」とか。「今、これ、滑ってるよ。やっちゃったなー」「じゃあ、すぐ変えて!」とか(笑)。そんな感じでやれるのが僕らにとってはちょうどいいんですよ。
— DJデュオっていうと、DJブースでケンカしてる光景がつきものだったりしますが。
Take:ケンカはないんですけど、選曲でスベった時にパッと横を見ると、Hisashiがイラッとしてるのはよく分かります(笑)。
Hisashi:(笑)でも、それはお互い様です。
Take:で、Hisashiがイラッとしてたら、その空気を察知して、こちらから先に「あ、これ、違ったねー」って言っておくっていう(笑)。
— お客さんを踊らせてるDJブースでまさかそんな会話が繰り広げられているとは(笑)。
Hisashi:バック・トゥ・バックが楽しいのは、そういうライヴ感だったり、ハプニングが起こるところ。一人できっちり繋いでいくより全然楽しいんですよね。
Take:bar SHIFTYで自分たちのパーティ、「MONKEY CLASSICS」を始めて、まぁ、今は不定期ではあるんですけど、未だにパーティが続いてるのもそういうことだったりするし。
— そして、一緒にDJするようになって5年目にして、去年、音楽制作に進出して、自主でリリースしたシングル「MONK」が大きな話題になりましたよね。
Take:ミックスCDを作ったのもそうですけど、DJのブッキングが欲しかったこともあって、「曲は作らなきゃなー」って、以前から考えていて。ただ、以前、楽器を触っていたとはいえ、曲作るのはまた別の話じゃないですか。そんな時に中野HEAVY SICK ZEROへ行ったら、ラウンジでAWAくんっていうトラックメイカーがライヴをやってて、それが格好良かったんですよ。で、その時に「一緒に曲作ろう!」ということになって、機材が揃ってる彼の家に通って、作り始めてから完成まで3年くらいかかったのかな。
Hisashi:元々彼はヒップホップ寄りのビートを作っている人なので、自分たちが出したい音とすりあわせるのにすごい時間がかかったんですよ。
Take:あと、彼はAORのバンドでやってたこともあるらしくて、ギターがめちゃ上手いんですよ。だから、一緒に曲を作るうえではギターが弾けることも大きかったですね。
— 「MONK」はあのギター・ソロの存在感が重要ですもんね。「MONK」の他にも作っている曲はあるんですか?
Take:そうですね。AWAくんと作業しながら、曲の作り方、機材の扱い方をつかんできたので、今は自分のコンピューターを使って、2人で何曲か作ってるところです。
Hisashi:ただ、実機は持ってないので、これから増やしていきたいと思っているんですけど……買い始めたら、ハマりそうで怖くもあるという(笑)。
Take:次は年内に出せたらいいなと思っているんですど、今はやりたいことがどんどん出てきてるので、間口を広く、DJやったり、作品を作ったりしていきたいですね。
— 最後に制作してもらったDJミックスについて一言。
Take:今まで出したミックスCDは家で聴けるような内容で、ChidaさんやTakashiさんからは「おっさんぽくていいねー」って言っていただいたんですけど、今回はダブテクノだったり、新譜中心に現場っぽい、若々しい内容にしてみました。一回聴くとお腹いっぱいになっちゃうかもしれないんですけど(笑)、末永く楽しんでもらえるとうれしいです。