Vol.71 COSAPANELLA(C.O.S.A. & Campanella) – 人気DJのMIX音源を毎月配信!『Mastered Mix Archives』

by Yu Onoda and Yugo Shiokawa

MasteredレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する「Mastered Mix Archives」。今回は、先日、2011年のアルバム『COSAPANELLA』をリマスター再発したばかりのCOSAPANELLAの2人、C.O.S.A.とCampanellaをフィーチャー。

2015年に自主リリースされた初ソロ作『Chiryu-Yonkers』を経て、昨年発表されたKID FRESINOとの共作アルバム『Somewhere』でブレイクを果たしたC.O.S.A.。そして、セカンドアルバム『PEASTA』が2016年のベストアルバムの一枚として高く評価されたCampanella。COSAPANELLAは、東海エリア屈指のラッパーである彼らにとってキャリア最初期のコラボ作であると同時に、当時、ラッパーとしての活動を休止していたC.O.S.A.が2007年から2011年にかけて制作したビートをもとにレコーディングした幻の作品だ。

今回、知られざる当時の制作秘話を中心に話を伺うと同時に、C.O.S.A.にDJミックスの制作を依頼。リリシストとして定評があるラップ同様、そのDJにおいても幅広い音楽のセレクトによって、エモーショナルな流れを生み出す優れたストーリーテラーとしての才能をご堪能いただけるはずだ。

Interview & Text : Yu Onoda | Photo : Tomoya Miura | Edit : Yugo Shiokawa | Special Thanks:CAFE & BAR and MUSIC JIRRI.

※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)

トラックのクオリティ的には全然ダメダメなんですけど、そうはいいつつも、初期衝動には絶対勝てないし、その良さが詰まってるいいアルバムだと思いますよ(C.O.S.A.)

— まず、2人の出会いについて教えてください。

C.O.S.A.:高1くらい? ラップを始めて、すぐの時期ですよ。

Campanella:でも、当時、俺とかRamzaはクラブで知り合ったDJやってるお兄さんを通じて、イベントに出させてもらうような駆け出しの時期だったのに対して、C.O.S.A.はガンガンにイベントでライヴをやってて。

C.O.S.A.:そう。高2くらいまでZERO BLUESっていう2MCのグループをやってて、それ以降はずっとソロですね。そして、トラックを作り始めたのは高2くらいかな。

Campanella:ラップをしながら、ZERO HIGH BRIDGE 2500っていう名義でトラックを作ってて。俺が初めて会った時のC.O.S.A.は、ラップをやってるやつの振る舞いでしたよ(笑)。でも、出会って何年かは、会ったらしゃべるけど、連絡先は知らなかったかも。ZERO BLUESのもう片方の連絡先は知ってて、ZERO BLUESの解散ライヴもそいつから連絡があって、観に行きましたもん。

C.O.S.A.:はははは。(栄のクラブ)OZONでやったライヴね。

— 当時の名古屋はどんな状況だったんですか?

C.O.S.A.:今よりもっとたくさんイベントがあったし、派閥ももうちょっと分かれていて、俺はM.O.S.A.D.とかがいたBALLERSの系列にずっといたし、派閥が3つ4つあって、それぞれが毎週パーティをやってましたね。

— C.O.S.A.がBALLERSの系譜にいたのに対して、Campanellaは?

Campanella:(ヒップホップバンド)ASIAN PIMPS界隈の人たちと会ったりすることはあったんですけど、俺やRamza、Free Babyroniaには先輩っていう先輩がいなくて。

Campanella『PEASTA』 Campanella、Ramza、Free Babyroniaという愛知・小牧の突然変異的な3つの才能が日本の音楽シーンに衝撃を与えた2016年のクラシック・アルバム。

Campanella『PEASTA』
Campanella、Ramza、Free Babyroniaという愛知・小牧の突然変異的な3つの才能が日本の音楽シーンに衝撃を与えた2016年のクラシック・アルバム。

C.O.S.A.:でも、CampanellaやTOSHI蝮とは出会ってから、今に至るまでずっと同じイベントに出てるんですよ。で、イベントがある時は、いつも俺の車でRamzaとお互いのビートを聴かせあうっていう(笑)。

Campanella:俺は同じイベントに出ると、C.O.S.A.から「めっちゃヤンキーな彼女が出来たんだよ」っていう、よく分からない嘘を毎回つかれてましたね。

C.O.S.A.:ははは。そんなことあったね!

— 当時はラップで食っていこうと考えて活動していたんですか?

Campanella:その時は先のことがまったく見えてなかったし、ラップで金を稼いでサラリーマン以上の水準の生活を送っている人と、まったく金をもらってない人が2極化しているように見えた音楽シーンで、自分がスターになろうなんて思ってなかったから、何も考えず、がむしゃらにラップしてましたね。

C.O.S.A.:俺は『COSAPANELLA』が出るもうちょっと前、たしか20歳前後くらいにラップするのを止めて、当時は地元の友達がしてるような普通の遊びをしていたんです。それから2013年に再開するまでラップからは離れていたんですけど、ヒップホップは変わらず好きだったので、クラブでみんなとは顔を合わせていたし、ビートは毎日作ってましたね。仕事が終わって家に着くと、その5分後にはMPCを立ち上げて、12時とか1時くらいまでビートを作ってたんですけど、それがとにかく楽しくて、行き先がほとんど決まらないまま、ストック曲が膨大にありましたね。

COSAPANELLA『COSAPANELLA』 フレーズの早回しによるサンプル・オリエンテッドなC.O.S.A.のトラックとC調なリリックをスキルフルにラップし、歌さえも披露してみせるCAMPANELLAが2011年に発表したキャリア最初期のコラボ作。ディスコの悪魔が乗り移った「NANKAIDEMONELL」は、現在もCAMPANELLAのライヴでたびたび披露されている。

COSAPANELLA『COSAPANELLA』
フレーズの早回しによるサンプル・オリエンテッドなC.O.S.A.のトラックとC調なリリックをスキルフルにラップし、歌さえも披露してみせるCAMPANELLAが2011年に発表したキャリア最初期のコラボ作。ディスコの悪魔が乗り移った「NANKAIDEMONELL」は、現在もCAMPANELLAのライヴでたびたび披露されている。

— 当時、作品化された曲は?

C.O.S.A.:TOSHI蝮がやってたクルー、現場叩き上げが2008年に出したアルバム(『SIX SENCE』)に何曲かビートを提供したのと、G.B.L.が2011年に出したアルバム(『Lucky Child』)にも1曲入ってるくらいですかね。ラップでは、DJ RYOWさんとAK-69さんが2008年出したミックスCD(『052 LEGENDS vol.3 -Next Generation-』)にC.O.S.A.名義の曲が入ってます。

Campanella:「HONEY」だったっけ?。

C.O.S.A.:いや、「HAPPINESS」。

Campanella:あの曲いいよね(笑)。俺らのなかで、C.O.S.A.のラップはかっこいいものとして揺るぎなくあったし、いつかはまたやるんだろうなと思いつつ、当時、C.O.S.A.が作っては、Myspaceにアップしていたビートを聴いていましたね。

— ビートライブはやってました?

C.O.S.A.:『COSAPANELLA』が出た2011年から始まったイベント『MADE DAY MAIDER』ではやったりすることもありましたけど、それ以前はやってなかったです。

Campanella:『MADE DAY MAIDER』っていうのは、RamzaとC.O.S.A.、Free Babyroniaのビートアルバムを作ろうと画策して、そのクルー名だったんでしょ?

C.O.S.A.:そうそう。

Campanella:その話を聞いて、LOW END THEORYみたいな、ラッパーじゃなく、DJやビートメイカー主体のパーティが出来たらいいねっていうことで、同名のパーティをCLUB JB’sで始めたんですよ。

C.O.S.A.:1回目の面子は、俺とFree Babyronia、Ramza、RISA OGAWA、Campanellaだけでしたもん。

Campanella:いや、ラッパーのライヴはTOSHI蝮だけで、俺は何もやってないよ。

— ただ、ビートメイカー主体のイベントを始めたものの、Campanellaはビートを作らないじゃないですか。

Campanella:そう。作らないのにイベントを主宰する側にいたっていう。しかも、今となってはなし崩し的にライヴをガンガンやってるし(笑)。

— でも、『MADE MAY MAIDER』がLOW END THEORYに影響を受けた始まったというのは、時代を感じさせる話ですね。

Campanella:その全盛期でしたからね。

C.O.S.A.:Samiyamがとにかくかっこ良くて。

Campanella:その頃とかに、Hudson Mohawkeの「Cbat」で価値観が壊れて。

C.O.S.A.:それは言えてる!

Campanella:『COSAPANELLA』とは別に俺がフリーダウンロードで出した『DETOX』では、ああいう先鋭的なビートをオタクめいた方向じゃなく、メインストリームに持っていこうっていう意識があったんですよね。

Campanella『DETOX』 『COSAPANELLA』と同時に制作が行われていた2011年のフリーダウンロード・アルバム。LAビートシーンに呼応し、Mimosa pudika aka Free BabyroniaやRamza、C.O.S.A.らが手掛けるレフトフィールドなビート上でCampanellaが鋭利な言葉を振り回すスリリングな作品だ。

Campanella『DETOX』
『COSAPANELLA』と同時に制作が行われていた2011年のフリーダウンロード・アルバム。LAビートシーンに呼応し、Mimosa pudika aka Free BabyroniaやRamza、C.O.S.A.らが手掛けるレフトフィールドなビート上でCampanellaが鋭利な言葉を振り回すスリリングな作品だ。

C.O.S.A.:あの頃のビートシーンは楽しかったな。SNSが今ほど発展してなかったから、何が起こってるのかがよく分からなくて、その謎めいた部分に惹かれたし、Blu & Exileみたいなアンダーグラウンドヒップホップがすごい好きだったんですよね。

— 『COSAPANELLA』のトラックは、LAのビートシーンが注目される前の時代のトレンド、それこそ、カニエ・ウエストやジャスト・ブレイズがやっていたネタを早回しするアプローチで作られていますよね。

C.O.S.A.:そう、その時代がドンピシャだったし、早回しの手法は特別なものではなく、俺らにとって、サンプリングを扱ううえでそれが当たり前のやり方だったんですよ。

— Campanellaから見て、ビートメイカーのC.O.S.A.はいかがですか?

Campanella:100%客観的には見られない関係なので、うまく言えないんですけど、C.O.S.A.は人間がいいですよね。リスナーが知ってるC.O.S.A.と、周りにいる人間が知ってるC.O.S.A.は恐らくちょっと違ってて、C.O.S.A.の振る舞いはいつもポップなんですよね。

— C.O.S.A.×KID FRESINOの『Somewhere』を聴くと、また印象は違うんですけど、2015年に出したC.O.S.A.のアルバム『Chiryu-Yonkers』は硬派でストイック、そして、エモーショナルな側面が凝縮されているのに対して、『COSAPANELLA』のトラックには、Campanellaが言うようにC.O.S.A.という人間のポップさが確かに感じられますね。

C.O.S.A.:まぁ、でも、ビートメイカーとして、俺は二流なんですよ。一流の人間は俺が出来ないことをやってくるし、それは越えられないし、『COSAPANELLA』に関してはCampanellaのラップが8割くらいを占めてると思いますよ。

Campanella:いや、7割くらいかな(笑)。

C.O.S.A.『Chiryu-Yonkers』 2015年に自主リリースされ、現在、入手困難となっているC.O.S.A.のファースト作。エモーショナルなスピットによってリリシストとして尋常ならざる存在感を放つ大傑作アルバムだ。

C.O.S.A.『Chiryu-Yonkers』
2015年に自主リリースされ、現在、入手困難となっているC.O.S.A.のファースト作。エモーショナルなスピットによってリリシストとして尋常ならざる存在感を放つ大傑作アルバムだ。

C.O.S.A. × KID FRESINO『Somewhere』 イベントでの共演をきっかけに、C.O.S.A.のストーリー・テリングとKID FRESINOの軽やかなフットワークが化学変化を起こし、カジュアルかつ普遍的な音楽世界に昇華された2016年の傑出したコラボ・アルバム。

C.O.S.A. × KID FRESINO『Somewhere』
イベントでの共演をきっかけに、C.O.S.A.のストーリー・テリングとKID FRESINOの軽やかなフットワークが化学変化を起こし、カジュアルかつ普遍的な音楽世界に昇華された2016年の傑出したコラボ・アルバム。

— どういうきっかけで、COSAPANELLAとして作品を出そうと思ったんですか?

Campanella:まさにソロ活動を始めようとしていた時期で、どういうきっかけでそうなったのかは覚えてないんですけど、C.O.S.A.がどこかのタイミングでストックしていたビート、2007年から2010年にかけて作った20曲を送ってくれてたんですよね。で、ちょうどC.O.S.A.の地元、知立のクラブへ遊びに行った時、“あのビートでアルバム作るわ”って話したことを覚えてますね。

C.O.S.A.:だから、実際のところ、俺はビートをあげただけで、『COSAPANELLA』では何もやってないんですよ。あ、でも、YUK(STA-ILL)くんをフィーチャーした「666…」だけビートを新しく作ったのか。俺がラップしてる「SUPER BAD」はラッパーとして活動してた時期の曲でそこにCampanellaがヴァースを足してくれた、リミックスなんですよね。

Campanella:「666…」は4小節じゃなく、6小節のループになってて、そのトラックでラップできるのかっていうトライアルでしたね。

C.O.S.A.:一番最初にラップを入れて送ってきてくれたのは「Have a nice game」だったよ。それで「Campanellaはこんなにラップ上手いんだ!」って思ったんですよ。「Have a nice game」は自分で作ったものの、全然好きじゃなかったし、Campanellaがその曲を選んだ時点で「この曲使うの?」って言ったくらいだったんですけど、ラップが乗って返ってきた曲は全然聞こえ方が変わってて、すごくびっくりしたし、他の曲もラップが乗って、俄然かっこ良くなりましたね。

— かっこいいというか、リリックの内容的にはC調でヒドかったりはしますが。

Campanella:はははは。俺はこういう感じでずっとリリックを書きたいんですけどね。

C.O.S.A.:この時のリリックは工場で仕事中に書いてたんでしょ?

Campanella:そう、仕事中に浮かんだ言葉をメモしたり、30分かからないくらいの勢いで曲を書いたりもしてた「NANKAIDEMONELL」はもともとMF DOOMの「Four Thieves Vinegar」のインストトラックに乗せてたラップを引っ張ってきたものだったり。作業的には『DETOX』と並行して、リリックを書いていたんですよ。

— シリアスでストイックな『PEASTA』でCampanellaを知った人にとって、『COSAPANELLA』で展開される珍萬な世界はびっくりするでしょうね。

Campanella:珍萬な世界を経て、『PEASTA』はああなってしまっただけで、『COSAPANELLA』の方が自分に近い……いや、でも、これははしゃぎすぎてるか(笑)。

C.O.S.A.:まぁ、でも、Campanellaは何枚もアルバムを出していますし。その都度その都度、いろんな表現が出来て、いいと思うんですけどね。

Campanella:だから全部の作品を聴けば、自分がどういう人間か分かってもらえるんじゃないかな。当時は人に聴かれることをまったく考えてなくて、他者を意識せず自由にラップしてましたから。今はことさらにリスナーを気にしているわけではないですけど、作品を作るにあたっては自然といろんなことを考えてしまったりもするので。

— 「交渉次第 Part 2」ではオートチューンを使っていたり、「Sweet Sweet Dayz」にいたっては歌っているし、人目を気にせず、純度の高い創造力が発揮されていますもんね。

Campanella:今聴き返すとちょっと恥ずかしかったりもしますけど、「NANKAIDEMONELL」は今でもライヴでやったりもしますし、『PEASTA』を作り終えて自分のなかで一周したというか、自分がやってたことは間違ってなかったなと今は思ったりもします。

C.O.S.A.:トラックのクオリティ的には全然ダメダメなんですけど、そうはいいつつも、初期衝動には絶対勝てないし、その良さが詰まってるいいアルバムだと思いますよ。

Campanella:「これがいいんだ」って思うところもあれば、「これでいいんだ」って思うところもある(笑)。

C.O.S.A.:今のCamapnellaからしたら、こんなの簡単に出来るでしょ?

Campanella:簡単は簡単だけど、簡単なことが一番難しかったりもするからね。ただ、最近出てるこの手の作品よりはちょっといいかなって、勝手に思ってるんですけどね。

C.O.S.A.:今は増えましたけど、当時はこういうスタイルでやってる人はいなかったですからね。

Campanella:トラックこそ違えど、トラップでやってることに近いというか、簡単に言えば、楽しい作品ということになるんじゃないかと思います。

C.O.S.A.:そういう意味で、このタイミングで『COSAPANELLA』を再発できたのは、2人にとって良かった気がしますね。

— 最後にC.O.S.A.にお願いしたミックスなんですけど、3年前にSoundCloudにアップしてた「Cherie Amour Mix Vol.1」同様、ヒップホップに限定されないいろんな音楽をミックスしながら、C.O.S.A.がラップで得意とするエモーショナルなストーリーテリングが、DJミックスというアウトプットでも見事に発揮されていますよね。

C.O.S.A.:今回、1曲目のAlex Wurmanの曲は『クロッシング・デイ』、2曲目のSuunsの曲は『名もなき塀の中の王』っていう俺の大好きな映画に使われている曲。そして、最後に入ってるStyles Pの「Smoke All Day」にはミュージックビデオがあって、登場人物の親父が朝仕事に行くんですけど、仕事先でやらかして怒られた時に反抗してクビになっちゃうっていう、そういうストーリーなんですよね。今回のミックスは、我々の生活や人生がテーマになっていて、そこでの感情を表した曲、歌詞にも繋がりがあって、普段から聴き込んでいる曲だけで構成したミックスなので、楽しんで聴いてもらえたらうれしいです。