2016年AWシーズンに発売され、瞬く間に完売となってしまったフレッドペリーとロンドンをベースにするクリエイターユニット、アートカムズファーストのコラボレーションが、2017年SSシーズンでも登場し、最新ビジュアルと彼らのディレクションによる動画も公開となった。今回は、2016年12月にロンドンで行われたオフィシャルシューティングの現場に潜入取材。アートカムズファーストのサムとシャカに、今回のコラボレーションについて話を聞きに行った。
photo:Camila Falquez、interview & text:Takaaki Miyake
— 2016年AWシーズンにACFとフレッドペリー初となるコラボレーションだったけど、周囲の反応はどんなものがあった?
「周りからの反応は素晴らしいものだった。セールス的にもだし、もちろん僕らも出来上がった製品を見てとても満足だった。さらにカスタマーからも良いフィードバックがもらえたんだ。特にフレッドペリーの若い層の顧客からね。彼らは何か新しいものを待っていたんだと思う」
— 二人は2016年10月に、このコラボレーションのプロモーションで日本に行って、お店でお客様にカスタムをしたよね。その時はカスタマーやあなたたちのファンと、どんな言葉を交わしたのかな。
「まず、あの企画は僕らのファンやカスタマーと直接会って挨拶をしたかったからなんだ。そして彼らから製品についてもっとフィードバックをもらいたかった。みんな僕らがフレッドペリーとコラボレーションしたことは嬉しがってくれていたよ。そしていつもは東京にしか行かないんだけど、今回はフレッドペリーのジャパンチームが大阪にも連れて行ってくれた。北新地の串揚げ屋は気に入ったよ(笑)。すごくいい経験だった。次はもっと別の都市にも行ってみたいね」
— インスタグラムで二人を見ていると、かなりの頻度でコラボモデルを着ている姿を拝見したけど、それは二人が本当にコラボモデルを気に入っているから、だよね?
「もちろんそれもあるけど、僕らの洋服を着てくれている人たちと繋がるためでもあるんだ。その人たちが日本にいても南アフリカにいても世界中のどこにいてもね。マーケティング的な視点で写真を投稿することは一切ない。それにどの写真に対しても必ずコンセプトやアイディアがある。僕らはそういった思いやインスピレーションを共有するためにインスタグラムを使っている。それにカスタマーの着こなしを見たりすることで僕らが逆にインスパイアされることもある。ソーシャルメディアは僕らのカスタマーやクライアントとのコミュニケーションの場なんだよ」
— フレッドペリーと取り組んだことで、何か自分たちに変化はあった?
「大きく影響したね。毎回どこかとコラボレーションをする時はいつも最大限のものを引き出そうと思うんだけど、今回は本当にフレッドペリーの人たちとのチームワークだったし、彼らのために働いているという感覚はなくて、自分たちがブランドに属しているように感じた。僕らのことも信頼してくれたし、とても自由にやらせてくれて、自分の感覚を存分に表現できたんだ。これは今までの働き方と違って新しいものだった。だから次回もしどこかがコラボレーションをオファーしてきても、理解という面でフレッドペリーのレベルにないブランドとはやりたくない。それはクリエイティブな面でもね」
— さて、今回の新しいコラボレーションについて教えてくれる? 前回と今回ではどんなところをキープして、どんなところを変えたのかな?
「良い質問だね。まず前シーズンから学んだことは、生産が十分な数でなかったということ。友達からも買えなかったという連絡をもらったりしたので、今回は少し多めに作り、商品の幅を広げた。そして今回もテーマに置いたのはフレッドペリーというブランドのオリジナリティを保とうということ。M12やハリントンのボンバージャケット、タータンライニングなどのシグネチャーアイテムや柄を使うことでそれを表現したんだ」
— ポロシャツのバックプリントに、FRED PERRYのアイコンともいえる「M12」について触れているよね。
「僕らはM12の大ファンなんだ。だけど他のフレッドペリーのファンの人は、ブランドは好きでも、M12というスタイル名までは知らないかもと思った。だからそういった人たちにM12が何かなのかを教えるために、白と黒のM12のポロシャツを1枚ずつ選んでバックプリントを施したんだよ」
— ハリントンJKのアップリケ「LEADER OF THE PACK」に込めたメッセージは?
「実は昨シーズンのACFのコレクションのほとんどのアイテムの前面には『LEADER OF THE PACK』のスティッチやプリントがされている。それを今回このコラボレーションシリーズのボンバージャケットにも使ったのは、僕ら自身のブランドACFとリンクさせるためだった。この言葉は『リーダーの集団』という意味だ。違うスタイルや考え方を持っていたとしても、一人一人がリーダーである。誰が上で誰が下であるなんてことは問題じゃない。僕らもサブカルチャーをレプレゼントしているけど、それだって一人ではできない。サブカルチャー自体も多くの人の集まりからできているものだしね。一人で物事を変えたりするのは恐いし難しいけど、友達や他の人とグループを作れば世界だって変えれるんだ」
— 今回の撮影はロンドン本社のフレッドペリーと一緒にビジュアルを作ったわけだけど、そのコンセプトや撮影手法はどのように話を詰めて行ったのかな。
「全て自然な流れから決まったよ。今回はManifestation(示威行動)が大きなテーマになった。ACFは僕ら二人だけのものではない。だから今回の撮影には、僕らがインスパイアした人、また僕らをインスパイアしてくれた人たちを連れてきた。人々に僕らのグループを紹介したかったんだ。性別や年齢に関係なく、Manifestationというムーブメントにいる人たちはみんなが『LEADER OF THE PACK』だ。だから今回の撮影では”これが新しいロンドン”、”今日のロンドン”、”これが新しい世代のクリエイティビティー“、というのを見せたかった。同時にこのアイディアをフレッドペリーのサブカルチャーの一部として推していきたかったんだ」
— 今のロンドンのサブカルチャーってどんなことだろう? 例えばスケートだって今はファッショナブルなものになりつつあるよね。
「それがサブカルチャーさ! サブカルチャーというと多くの人はそれは60年代頃のもので、もう存在しないと思っている人がいる。でも60年代や90年代じゃないから名前を付けないだけで、今のサブカルチャーは何らかの形でクリエイティビティーと繋がっているはずだ。もしロンドンが楽しさやクリエイティビティーに溢れていたら、みんなロンドンにとどまりたいと思う。だから僕らはそこに全力でエナジーを注いでいる。今のサブカルチャーとは、色々なサブカルチャーをミックスしたものだと思う。それは昔だってそうだった。今はパンクみたいにピンポイントで色濃く残っているものがないだけさ。それにサブカルチャーというのはスタイルだけでなく、メンタリティーの問題でもあるんだよ」
— これからの二人の予定は?
「日本へはすぐにでも戻りたいね。そしてもっと多くの違った種類のプロジェクトもやっていきたい。ムービーでもトークでも、もっとインタラクティブなことに挑戦していきたい。多くの人とつながりたいし、僕らのカスタマーと近くいるためにも彼らを巻き込んだ動きをやっていきたいね。あとは音楽ともっと深く関わっていくことかな。音楽作りにもハマっていて、将来はコレクションにリンクする音楽を作るのも楽しそうだとも考えている。例えばコレクションに基づいた音楽をCDやUSBにして、そのコレクションに付属させたりね。そういった音源を各ピースや各コレクションを振り返るのに使えたら面白いだろうね」