ファーストアルバムをリリースしたばかりのKANDYTOWNからラッパーのIOに引き続き、今度はYOUNG JUJUがソロアルバム『juzzy 92'』をリリースした。クルーのトラックメイカーであるNeetzや呂布、MIKIに加え、DJ Scratch NiceやMASS-HOLE、Febbといったシーン最前線のビートメイカーが参加した本作にあって、B.D.をフィーチャーした"Live Now"を含む2曲のトラックを手掛けたラッパー、ビートメイカーのJJJ。
音楽を通じて、急速に親交を深めているという彼との対談からソロアーティスト、YOUNG JUJUの魅力に迫った。
Photo:Shin Hamada、Interview&Text:Yu Onoda、Edit:Keita Miki
さすがにこの1年間でラップしすぎましたね。(YOUNG JUJU)
— 2人の最初の出会いは?
YOUNG JUJU: 今年春、ソロ用のビートをお願いしたくて、スタッフを交えて会ったのが最初ですね。そこから急速に接近していった感じなんですけど、2度目に会った時は俺が中目黒で寿司食ってたら、Jくんから連絡があったんですよ。
JJJ: ちょうど、俺が用事で東京に出てきてるタイミングだったから、「JUJUは何やってるのかな?」って思って、連絡したんです。
YOUNG JUJU: それで合流してから一緒に飲みに行って、そのまま、家に遊びに来て、ゆっくり音楽の話をしたんです。今回のアルバムを作るにあたって、Jくんが曲を沢山送ってくれたんで、この一年は「Jくん!」って感じで過ごしてましたね(笑)。
JJJ: KANDYTOWNのことは佐々木(KID FRESINO)から教えてもらってはいたんですけど、JUJUは初対面でも初めて会った感じがしなかったんですよね。普段はタメ語だし、何か頼み事がある時だけ敬語を使ってきて、「こういうやつ、俺の周りにもいるんだよな」って思って(笑)。
YOUNG JUJU: あと、共通の知り合いがいたり、実は10代の頃、知り合いになったFebbの家に曲を作りに行ってたこともあって。その後はずっと会ってなかったんですけど、Fla$hBackSのことは知ってたし、アルバムもずっと聴いていて、本人を前にして言うのは恥ずかしいんですけど、俺のなかで、JくんとFla$hBackSは日本のなかでは一番だし、一緒にやりたいって素直に思ったんですよね。
— そして、YOUNG JUJUにビートを送るようになった、と。
JJJ: そうですね。JUJUが好きそうなトラックだったり、自分やFla$hBackSでは使わない、趣味で作ってるようなトラックも送ったりして。今回のアルバムでGottzくんと一緒にやってる”Worldpeace”なんかは後者で、「こういうトラックを選ぶんだ!?」って思いましたね。
YOUNG JUJU: 俺からすると「Jくん、こういうトラックも作るんだ!?」って思いましたね。
— “Worldpeace”は、JJJ流のトラップを作ってみたっていう?
JJJ: トラップというより、あの遅いBPMで作ってみようと思って作った曲ですね。あのトラックで自分ではラップしないし、Febbも佐々木もやらないだろうから、そういうトラックでラップしてたのは新鮮だったし、発見もありましたね。
— では、JJJが考えるJUJUに合いそうなトラックっていうのは?
YOUNG JUJU: 結構大ネタのサンプルを使って、テンポのいいものが多かった気が。
JJJ: うんうん。ドープな、暗い感じのものより明るくて華やかなビートの方がいいんじゃないかって思って。
YOUNG JUJU: “Worldpeace”が送られてきた時、ちょうど、Chance the Rapperを聴いていて、共通するものを感じて、「これならリリック書けるな」って。そうやってJくんが曲を送ってきてくれるのがうれしかったし、KANDYの仲間がみんなアルバム制作に協力してくれたり、そういううれしい気持ちが出た曲になったんですよね。
JJJ: 俺はアルバムだと、呂布くんが作った”Speed Up”が好きだな。この間、JUJUと一緒になった福岡のライヴでやってて、格好いいなって思って。
— “Worldpeace”や”Speed Up”しかり、今回のアルバムはテンポの遅い曲が多いですよね。
YOUNG JUJU: 例えば、KANDYTOWNの”Get Light”のように、ノらなきゃいけないビートのラップは叫んでるような感じになっちゃうので、自分らしくないんですよね。そうじゃなく、聴かせるラップの方が自分らしいから、すっきりしたビートが多くなったんでしょうね。あとは同時進行で作ってたKANDYのアルバムはアッパーなビートが多かったし、KANDYの仲間には負けたくないっていう気持ちがラップを走らせてしまうところがあったからこそ、ソロアルバムはそれとは大分違うものになったなって。
— KANDYTOWNとは違って、自分が全て責任を取らなきゃいけないソロは作る際の意識はやっぱり違いました?
YOUNG JUJU: フリーのEPを何作か出したいと思っていたので、ソロアルバムを出すタイミングがこんなに早く来るとは思っていなかったし、一年の流れがあまりにも速くて、自分でも追いつけてない瞬間もあって……。
— しかも、グループとソロのファーストアルバムを同時進行で作るのは相当に過酷だったんじゃないですか。
YOUNG JUJU: いやぁ、結構しんどかったですね。色んなヤバいビートを前に、集中力を一点に向けられなかったし、「これを使おう」って思ってたフレーズだったり、タイトルをKANDYのアルバムで使っちゃって、気持ちが切れた瞬間もあって。さすがにこの1年間でラップしすぎましたね。
— 言葉のストックがなくなったら、あとは沸き上がってくるのを待つっていう?
YOUNG JUJU: そう、だからこそ、JくんとかFebb、B.D.さんをはじめ、アルバムに参加してくれた人のラップやトラックに喚起されてラップするのが楽しかったんですよね。Jくんはファーストアルバムの時、どうだったんですか?
JJJ: ホント俺はめちゃくちゃ遅れまくって、最悪の出だしだったから、気持ちが一周して、完成した時には出したくなくなってたというか、「あぁ、ようやく出た……」って感じだったかな(笑)。
YOUNG JUJU: いま俺もそんな気分ですね。IOくんが『Soul Long』を作ってた時も全く同じでしたね。去年の12月の段階で「いや、もう、何も浮かばない……」って言ってて、「リリースはあと2か月後だよ」って言ったら、黙っててくれって感じだったんですよ。それで1月からバーッと録り始めて、全部録り終わった瞬間に「飽きた。もう出すも出さないも勝手にしてくれ。」くらいな感じで(笑)。だから、ソロ作る時はこんな風になるのかなって思ってたんだけど、自分のアルバムが完成して、IOくんの気持ちが凄く分かりましたね。
— JJJは同じラッパーとして、JUJUのラップはどう捉えてますか?
JJJ: 胸を張った声の出し方がすごい好きなんですよね。
YOUNG JUJU: よく言われる。まぁ、自分としては、胸張ってるつもりはないんですけどね(笑)。でも、ラップしてる時は自分が一番だと思ってるから。
JJJ: それがすごい出てるよね。JUJUって、ラップを始めたのはいくつの時なの?
YOUNG JUJU: 16、17くらいですかね。学校の先輩にIOくんとか菊丸がいて、地元に帰るとGottzたちがいて、気づいたら、どちらもラップをやってて、「こいつら何なんだ」って思ってたんですよ(笑)。
JJJ: だから、まぁ、ラップも遊びの一つってことだよね。
YOUNG JUJU: そう、だから、ラップすることは深く考えずに始めたというか、ビートを延々と流すなかでさすがに耐えられないって思った時に「お前も書けよ」って言われたんですよ。当時ラップやってる人たちを見て、こんなんやってこの人たち大丈夫なの?って思ってたけど、結局面白いからその空間にいて、「ラップやんないっしょ」って思っていたのに、気づいたら、一緒にラップしてたっていう(笑)。
— そう思っていたのに、ラップにハマったきっかけというのは?
YOUNG JUJU: Bボーイが格好良かったんですよ。ファッションとか動向はUSのヒップホップをチェックしつつ、日本ではIOくん、YUSHIくんがやってたBANK ROLLが格好良くて、彼らをお手本に、その日あったことをラップするようになって。どこで会って、何喰って、みたいな、そういう内容が最初でしたね。Jくんはなんでラップを始めたんですか?
JJJ: 俺はもともと川崎の15人くらいいるクルーでDJをやってたんだけど、誰一人としてラップが上手いやつがいなくて、これ、俺がやった方がいいんじゃないって。そう思いつつ、ラップがあまりに好きすぎて、リリックは書いていたので、ラップやれるならやれば?って言われたんだよね。
— ファーストの時のJJJのラップはトラックに対して、言葉をタイトにハメていくアプローチでしたが、ここ最近はいかがですか?
JJJ: いま作ってるアルバムは、フリースタイルに近い感じで初期衝動的に書いてますね。そこにはもちろん意味もあるんだけど、後から自然に繋がっていく感じで、前ほど考えなくなりました。
YOUNG JUJU: Fla$hBackSは最初にコンセプトを決めてリリックを書いたり、作品を作っていたんですか?
JJJ: いや、全然。Fla$hBackSの曲は元々送った曲のタイトルからリリックを書いてくれて、そこがうれしかったりするんだよね。というのも、それって、曲のノリを分かってくれてるっていうことだから。
YOUNG JUJU: KANDYと一緒ですね。Neetzがタイトルを付けたそのまんまリリックを書きましたからね。
JJJ: そうやって曲が作れるっていうことは見えてるものが一緒なのかなって。そういう話はいつだったか佐々木ともして。
YOUNG JUJU: でも、フレシノはリリックにダメ出ししたりするんでしょ? IOくんが一緒に曲作った時、すごいダメ出しされたって言ってたんですけど、フレシノのことをすごい褒めてて。ああいう意識を持ったやつは違うよなって言ってましたね。
— JUJUのラップのアプローチは?
YOUNG JUJU: 考えすぎると、ビートに言葉がハマらなくなって、その言葉がハマるビートを待ってるうちに次に進めなくなっちゃうんですよね。だから、俺もかなりフリースタイルに近い感じ。その場、その瞬間のモチベーションが一番大事ですね。
JJJ: 友達と話した時のどうでもいい会話が頭に残っちゃってる時があって。俺はその時の一節をリリックに使うのが好きなんですよね。その2人にしか分からない話を使って、自分たちだけでアガったりもするっていう。
— JJJのアルバム『Yacht Club』はその時感じてた怒りだったり、複雑な感情がリリックに表れてたじゃないですか?
JJJ: そうですね。
— では、JUJUがアルバムを作ってた時期の気分やムードはいかがでした?
YOUNG JUJU: KANDYTOWNの方が上手く進んでたり稼働が多かったりでソロアルバムの方にはあんまり集中出来てなかったかもしれないですね。スピード感が凄かったので。トラックメイカーや客演のラッパーと作業を進めていくなかで、トラックやその人に気持ちが引き出されて書いたリリックが多かったかもしれません。
— JJJが提供したもう1曲”Live Now”の制作はいかがでしたか? この曲はB.D.をフィーチャーしつつ、トラックでは清水翔太”Overflow”をサンプリングしているんですよね。
JJJ: 清水翔太のあの曲はKiano Jonesに教えてもらって、「こういう格好いい曲があるんだ!」って思ったんですよね。清水翔太は普通に音楽性が好きだし、歌も上手いじゃないですか。そのなかでも俺はああいう泣いてる感じのギターが大好きだし、Kianoから送られてきた曲を聴いたその勢いで作ったんですよ。
YOUNG JUJU: 清水翔太の曲を使ってるって聞いて、すごいびっくりしましたよ。このビートはすごくよかったんですけど、ライヴでやりづらそうだなと思って、使わせてもらうかどうしようか迷ったんですけど、エンジニアのILLICIT TSUBOIさんに集まったビートを色々聞かせてて、「これがいいじゃん!」って言われたのがそのビートだったんです。そして、フィーチャリングでお願いしたB.D.さんにも3曲くらい送ったビートのなかから選んだのはやっぱり”Live Now”で。だったら、この曲でやるしかないなって。
JJJ: 俺も自分から送っておきながら、これ使うんだ? 大丈夫かなって思ったんですけど、許諾が取れて良かった。この曲はB.D.のラップもすげえ格好いいよね。恥ずかしすぎて誰も言えないようなことを胸張って言ってるところが最高だなって。
YOUNG JUJU: B.D.さん、ホント格好いいです。B.D.さんのラップが好きだし、人として凄くリスペクトしてますね。俺、実はB.D.さんが店長を務めてる渋谷の(セレクトショップ)GROW AROUNDで働いていたことがあるんですけど、当時、自分はガキだったんで、遅刻、欠席が半端なくて、毎日めちゃくちゃ怒られてて。だから、今回、スタジオに来てくれたことが信じられなかった。だって、毎日怒られてた人だから、一緒に曲を作るなんてあり得ないって思ってたんですよ。
— その話からすると、この曲でB.D.はJUJUに向けてラップしているところもありそうですよね。
YOUNG JUJU: そう……ですかね……。自分としては、一緒に曲を作れたこと、それがとにかく嬉しかった。
— KANDYTOWNのラップにはメッセージ性がなくて、いかにスムーズに言葉を乗せていくかというところでラップが成立しているグループと言われているじゃないですか。でも、”Live Now”しかり、今回のアルバムでは言いたいことを言ってるし、JUJUなりのメッセージが含まれていますよね。
YOUNG JUJU: 今回のアルバムにコンセプトはないって言いましたけど、KANDYでそう言われていることに色んな思いがあり、言いたいことをもっとクリアにしてやろうと思ったところはあって。だから、自分としては新しいリリックの書き方、言葉の使い方をしているし、周りからも「こんなに振り切るんだ?」とも言われて。ただ、メッセージ性は出しすぎるとダサかったりするし、Jくんのラップはその絶妙なラインで成立していますよね。フレシノとやってる”Turn”は意味や思いが込められているんだけど、一回聴いて考えないと分からない、そういうバランスがすごい格好いいなって。
JJJ: 聴いて、一発で分かるものほどつまらないものはないよなって。だから、隠しつつ出すっていう。そういうラップのルーツは、俺らのなかではFebbなんですよね。あいつのアルバムを聴けば分かると思うんだけど、あいつのラップは接続詞がおかしかったりして。でも、それが違うところにつながるのが面白いというか、迷路みたいで、混乱したりもするんだけど、そこがあいつのいいところでもあるっていう。まぁ、でも、”Live Now”を聴けば分かるようにJUJUは熱い男ですよ。
YOUNG JUJU: 熱いんですかね?
JJJ: まぁ、そうなんじゃない? こんなパーティー・ピープルぶってはいるけど(笑)。
【YOUNG JUJU 『juzzy92’』】
発売中
品番:PCD-28031
レーベル:P-VINE / BCDMG / KANDYTOWN LIFE
価格:2,800円 + 税
■トラックリスト
1. Hallelujah
Produced by DJ Scratch Nice
2. The Way
Produced by MASS-HOLE
3. Angel Dust feat. Neetz, IO
Produced by Neetz
4. Tap This feat. FEBB
Produced by FEBB
5. First Things First
Produced by FEBB
6. Skit 24/7
Produced by MIKI
7. Live Now feat. B.D.
Produced by jjj
8. Ready
Produced by Jashwon
9. Prrrr. feat. DONY JOINT
Produced by Jazadocument
10. Speed Up
Produced by Ryohu
11. Til I
Produced by U-LEE
12. DownTown Boyz feat. Ryohu
Produced by Ryohu
13. Worldpeace feat. Gottz
Produced by jjj
14. Outro
Produced by Jazadocument